決められた運命

□第1衝突
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━side:絵麻━



東京、吉祥寺

ここがこれから私たちが住むことになる街。
新しい生活の始まる場所だ。






学校が終わって、私はこの吉祥寺の住宅街を歩いていた。




絵麻「えーっと、この道をまっすぐだよね?」
ジュリ「そのようだな」



パパから渡された地図を見ながら肩に乗っているリスのジュリとこっそり話す。
間違っていないみたいだからこのまままっすぐ進めば新しい家、"サンライズ・レジデンス"が見えてくるだろう。

一緒に地図を見ながらジュリははぁ、とため息をついた。



ジ「全く、ちぃが初めて新しい家を訪れるというのに、なぜ葵は来れないのだ」
絵「仕方ないよ、葵さん大学生なんだしいつも帰ってくるのも遅いから、今日も一緒には行けないって元々言われてたでしょ?」
ジ「しかしだな・・・・・・」




ジュリがまた小言をいい始めようとした時






「そこのおねーちゃーん!どいてーっ!」
絵「えっ!?」





背中から大きな声が聞こえた。
自転車が私の方に向かって迫ってきていたのだ。
とっさに避けたけどつまずいてしまい、歩道へ倒れこむ。




「ご、ごめんなさいっ!おねーちゃん大丈夫?」
絵「う、うん・・・・・・平気だよ」




心配そうに慌てて自転車に乗っていた男の子が私の顔を覗き込む。
そのふわふわして柔らかそうなショートボブの髪の男の子は少しかわいく見えた。





「おいおいおい、弥、お姉さんにケガさせちゃったのか?

大丈夫?ごめんね、うちの弟がやんちゃしちゃって・・・・・・ケガはないかな?」


次に現れたのは20代後半位の優しそうな男の人だった。
お父さんかと思ったけど弟という言葉にハッとして言葉を返す。




絵「平気です。少し膝を打ったくらいで血も出てませんし」
「本当に?どれどれ、見せて?僕医者なんだ、小児科だけどね。だから少しの傷なら診られるよ」
絵「そうだったんですか・・・」


お兄さんがまじまじと私の膝を見つめる。
この状況に恥ずかしさを覚えながら待っていると、弥くんが私の前にきた。



弥「おねーちゃん、本当にごめんね」
絵「ううん、いいんだよ」




お兄さんの診察(?)も終わって立ち上がると"おねーちゃん!"と再び弥くんに呼ばれた。

弥くんの手のひらからバラバラとキャンディが落ちてきた。
どうやら、ごめんねの気持ちらしい。私が受けとると、お兄さんは弥くんをほめて頭を優しく撫でていた。



私はとても嬉しい気持ちで二人と別れた。






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マンションの前で何度目になるか分からない深呼吸をする。

漸くマンションにたどり着いたものの、私はこれが兄弟達と初めての顔合わせになる。
私はごくりと唾を飲み込みながら呼び鈴を鳴らした。

インターフォン越しから聞こえてきたのは涼やかな男の人の声だった。


絵「あの・・・・・・私!
━━━━━わたし、今日からお世話になる・・・・」
「私たちの妹になる方、でしょうか?」
絵「は、はいっ・・・・・・!」




精一杯あいさつの文句を考えたものの、あまりよい言葉も浮かばず"妹"と呼ばれたことに思わずびっくりしていた。




「そちらで少々お待ち下さい」





暫くして、ドアが開くと中から男の人が姿を現した。
一瞬驚いた顔でわたしの事を見たけど、それもすぐに戻る。


右京「はじめまして、ようこそいらっしゃいました。私は次男の右京です」
絵「右京・・・・・・さん」
右「それと、あの・・・もう一人女性が住むと伺ったのですが?」
絵「えっと、葵さんでしたら大学に行っているので後からこちらに向かうそうです」
右「そうでしたか、では中にお入りになってください」





メガネを掛けた理知的で涼しげな目元、スーツにはひまわりのバッジが光っていて彼が弁護士であることを証明していた。
私は右京さんと一緒にエレベーターへと乗り込む。



右「今から5階に行きますが、そこは私たち兄弟の共有スペースになっているリビングです。食事などは一緒にそこで済ませますので」
絵「は、はい」



なるほど、普段はそれぞれ別の部屋にいるんだ。
そんな説明を受けているうちに、エレベーターは5階に到着した。
エレベーターを降りるとその階にはドアが1つだけあった。



右「すでにお聞き及びかと思いますがうちは男ばかりのむさ苦しい兄弟なんです。いろいろと不都合はあるでしょうがみんなで協力するのでご了承ください。
女性同士でしか話せない内容でしたら、もう一人の方に相談して頂けると嬉しいですが・・・」



そう言いながら右京さんはそのドアを開けた。
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