決められた運命

□第3衝突
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━side:葵━


サンライズ・レジデンスに来て、1ヶ月がすぎた。

始めは家族の中に他人が入るなんて…と不安もあったし、絵麻ちゃん自身もそれを感じていたみたいだけど、朝日奈家のみんなが親切にしてくれたから次第にこの生活にも慣れてきていた。




そんな6月22日の夜……




『……ん、電話?絵麻ちゃんからだ』



部屋で明日の準備をしていると、絵麻ちゃんから電話がかかってきた。



『もしもし、絵麻ちゃん何かあったの?』
絵「実は、私の部屋のお風呂が壊れているみたいで、お風呂に入れないんです」
ジ「そこで葵の部屋にあるお風呂を使わせてもらいたい!」
『お風呂?全然構わないけど、まだ準備してないからちょっと待って……』


電話を続けながらお風呂へ向かって、蛇口をひねる。


……でもそこから水が出てくることはなかった。





『ごめん絵麻ちゃん、私の部屋のお風呂も壊れたみたい……。面倒だけど5階に行って共同のお風呂を借りようか。私はもう少しやることがあるから絵麻ちゃんだけ先に行ってて』
絵「わ、わかりました!」





一通り話をすませると、私は再び明日の準備へと戻った。












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『(思ったより準備に時間かかったな……絵麻ちゃんはもう入ってるよね)』


エレベーターが5階に着き降りると中には2つのくつがそろえて置いてあった。
……でもそれは絵麻ちゃんのものではなく、朝日奈家の兄弟のだれかのものだとすぐに分かった。




リビングを見てみるとそこには、椿さんと梓さんがいた。
梓さんが私に気付いて優しく笑う。



梓「どうしたの、もう夜も遅いし何かあったのかな?」
椿「あ、葵だー☆どうかしたの〜?」
『私の部屋のお風呂が壊れてしまったみたいで、ここのお風呂を使わせてもらおうと思ったんです。絵麻ちゃんが先に来ていると思うんですけど……』
椿「絵麻?カノジョは見てないよ、ねー梓?」
梓「そうだね、僕たちは結構前からここにいたけど彼女は見てないよ」
『そうですか……、椿さんと梓さんはどうしてリビングにいたんですか?』




絵麻ちゃんを心配しつつ二人がどうしてここにいたのか尋ねると、椿さんが私にある物を見せた。




椿「俺たち、仕事の練習で台本の読み合わせしてたんだー!」
梓「今度椿がキョーダイ恋愛モノのドラマCDを収録するから、練習台として僕が付き合ってたんだ」
『そうだったんですか、声優さんも俳優と同じ位大変なんですね』
椿「何なら俺たちの練習見てく?ナマで見る事って珍しいっしょ?」


椿さんに誘われてリビングの時計を見ると結構遅い時間で、これ以上は明日に支障をきたしそうな頃だった。
でも、断るのは失礼かな……?


梓「椿、見せたい気持ちは分かるけど彼女も忙しいだろうしお風呂に入りに来たんだから、止めたら可哀想でしょ?」
椿「それもそーだな。じゃあまた時間ある時に見せてあげる☆」
『本当ですか?……じゃあ、楽しみにしておきますね』
梓「お風呂、ゆっくり浸かってきてね」





椿さんと梓さんに見送られながら私はお風呂へと入った。
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