決められた運命

□第15衝突
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ーside:??ー


椿「おーい、葵ー!」


街へと飛び出した椿だったが、彼は葵の部屋の場所を知らない。町の中を彼女は歩いていないか……、そう考えた椿はそれらしき女性を見かけては声をかけていた。


……でも、不審者のように見られるだけで、葵本人が見つかることはなかった。








椿「くっそ、手当たり次第に探すのは辛いかもしんねーな……」

梓「椿、こんなところにいたの」





椿の横に一台の車が止まったかと思うと中から梓が声をかけた。




梓「多分葵は多分吉祥寺周辺にはいないと思うよ。……葵の部屋に行こう、直接家まで行ってちゃんと話も聞いて……謝らないと。部屋にいなかったら帰ってくるまで待てばいい。待ってでも僕は謝らないといけないからね」
椿「そーだな、じゃあさっさと葵 の部屋に行きますか!」










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数日ぶりの玄関に、梓は少し緊張する。


ここで自分は誰よりも朝日奈家の事を考えていた葵に怒ってしまったのだ。あんな事を言っておいて今さら謝られても……と言われてもおかしくない。




でも、そうだとしても。




意を決してインターホンを押す。椿も梓も、じっと閉じた扉を見つめていた。

しばらくして、中からパタパタと歩くような音が聞こえてどうやら出かけてはいなかったことを確認できてほっとする。






―だが、







棗「………はい?」








 「「な、棗………?」」



その開かれた扉から姿を現したのは、彼らの三つ子の一人である棗だった。








棗「なんだ、椿に梓じゃないか。白百合に何のようだ?」
椿「ちょっと葵と話したいことがあるんだよ。てゆーか、なんで棗が彼女の部屋から出てくるわけ?」
棗「それは………って、コンロの火がつけたままだ。白百合、椿と梓が話したいそうだが……」




いつものスーツの上に見たことがないエプロンを着けた棗は再び部屋の中へと入っていく。状況が理解できない椿と梓は動けないまま玄関に立ち尽くしていた。



すこしして、棗が扉を開ける。





棗「"わたしと話すことなんてもうないと思いますが……それでも話したいことでしたらお入りください"だそうだ」
梓「じゃあ、あがらせてもらうね」
棗「………俺も聞かせてもらうぞ。何があってこんなことになったのか、知りたいからな」



棗の言い方に疑問を感じたが、それを問い詰めることはせず部屋へと足を踏み入れる。




 『いらっしゃい、椿さん、梓さん。……お久しぶりです』
 「「………!」」





部屋に入ってまず目に飛び込んできたのはとてもやせ細った葵の姿だった。もともと細い体型の彼女だが、それよりもさらにやせてしまった。
すぐに椿は駆け寄ってその肩を掴む。




椿「どーしたんだよ葵!?体調悪いのか?」
 『これは体調が悪いわけではないので大丈夫ですよ。ただ……5日近く食事をしていなかったので』
棗「ったく、いくら仕事が忙しいからって食事くらいしっかり取っとけ。いつも連絡が取れる奴が突然何の連絡も取れなくなると不安になるんだよ。今暖かいもの作ってるからじっと座ってろよ。椿と梓も、ちょっと待っててくれ」



そう言ってキッチンへ棗は入っていった。二つしかない椅子のひとつに葵は腰を下ろしてふぅ…と息をついた。



『それで……椿さんと梓さんは一体何の用ですか?』
椿「何って、葵が俺らを騙してまで家から出て行ったからに決まってるだろ。なんで突然そんな事したんだ」
『騙してはないです。だって私は麟太郎さんや絵麻ちゃんもだましてこれまで居候していたんですから』
梓「それが僕らについている嘘だって言いたいんだ。麟太郎さんから全部聞いた、だからなんで僕らに嘘をついたのか聞きたいんだ。葵がみんなを裏切ったなんて決め付けて、本当にごめん。許してもらえるとは思わないけど、少しでも君の本心が知りたいんだ」



椿と梓が続けて話すと、葵の表情が少し変化した。
そこに、小さな鍋を持った棗が来る。




棗「さっきから騙すとか嘘だとか何の話をしてんだ?白百合は体調不良なだけじゃないのか?」
『………棗さんは何も知らないので、今回の事も含めて全て話します。絶対に絵麻ちゃんや、他の兄弟には言わないと約束してください』





スッと目を細めた彼女は、一体どこを見つめているのか……

少しして、彼女が抱えているものをひとつずつ語り始めた。
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