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□手紙
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「あっ…、青根くんのバカぁー!!」
私の声が校舎中に響き渡った。
周りが私を目で追っていたけどそれどころじゃなかった。
だってだって、あれは青根くんが悪いっ!!
ーー遡ること10分前
「青根くんっ!おはようっ!」
「!!」
「?、どうしたの?…ん、なんか隠してる…」
最愛の彼・青根高伸くんに朝から会えたと思ったら、彼は何か後ろに隠していた。
「…ねぇ何それ」
「っ……」
「っ?手紙?」
「っ!?」
後ろに回り込まれて驚いたのか隠し持っていた物を持って腕を上げた青根くん。
うん、やっぱり手紙だ。やけに可愛い封筒だし。
「何なのよーそれ!」
届くわけがないけれど腕を伸ばしながら詰め寄ってみる。でも青根くんは首をぶんぶん振るばかりだった。
「っ、ラブレター貰ったんでしょ…」
「っ!!」
「だってこんな…、昇降口で手紙だなんて明らかにそうじゃん…!」
「っ…!!」
青根くんの顔が赤い。
やっぱりそっか。
なんだろう、よく分からないけど涙が出てきそう。
「あっ、青根くんのバカぁー!!!」
青根くんの赤くなった顔を見たくなかった、それ以前に自分の泣き顔を見られたくなかった。そんなことを考えたらあんな風に叫んで逃げてしまって…、今に至る訳なんだけど。
「青根くんの、バカ……」
アニメでよく見る学校の屋上なんてものは立ち入り禁止で入れないし、一人になれるところなんて校舎裏ぐらいしかなかった。
「寒っ…」
11月半ば、女子高生なんてものは足出してなんぼと思って今の時期でも生足の子が多い。現に私もそうなのだが。
「青根くん……」
そういえばそんな生足に靴下の私を見て青根くんは自分のジャージを私の腰に巻いてくれたっけ。大きすぎで引きずっちゃうよ、なんて言って二人で笑ってたな。
「っ…、青根くんっ……」
無口だけど優しい、私の大好きな、大好きなっ……
「私、振られるのかな…」
「そ、んなわけないっ!!」
「っ!!、…あおっ、ね…くんっ……」
あぁ、とうとう泣いてしまった。
息を切らして追いかけてくれた、抱き締めてくれた青根くんの温もりが伝わってきて涙が止まらなかった。
「青根くんっ、ごめっ、」
「俺が悪かった、名前は悪くない」
「でもぉお」
青根くんは嗚咽が酷い私をずっと抱き締めてくれて、頭を撫でてくれて、落ち着くまで背中も擦ってくれた。
「手紙のことはもう何も言わない。私青根くんのこと信じてるから」
「っ!……あれは…」
青根くんのお陰で随分落ち着いたけれど、手紙のことを話すとまた歯切れが悪くなった。もういいのに。
「……あれはっ!!…んっ!!」
ずいっと私の前に出されたあの手紙。
え、私が読んでいいの?
恐る恐る手に取ると、封筒の下に『青根より』と書いてあった。
「え、これって……、青根くんが?」
コクッ、と頷く青根くん。
「俺は、気持ちを伝えるのが苦手だから…、手紙に書いて渡そうと思って…」
「……、っ」
やばい、また泣きそう。
「ごめん、ごめんね青根くん…!私勘違いしちゃって…」
謝り倒す私に、いいんだよと首を振る青根くん。
あぁ、もう、私この人がいないと生きていけないかも。
「青根くん、ぎゅってしていい?」
「?、っ!」
答えを聞く前に飛び掛かってしまった。だってだって、青根くんが好きで好きで仕方ないんだもん!
「青根くん大好きっ!!本当に…世界で一番好きっ…!!」
腕を青根くんの逞しい首に絡ませれば腰に腕をまわしてくれた。
ふっと笑いながらそのまま二人の距離は近づいて、そして消えた。
「私叫んで飛び出しちゃったから皆にからかわれちゃうよー!あ、でも二人で戻ったら皆察してくれるよね?」
「っ!?」
「そこで赤くならないでよ〜!でも二口らへんしつこそうだよね」
二口の名前を聞いて苦い顔をする青根くん。これは覚悟した方がよさそうだ。
「青根くん、手紙ありがとね」
「…ん」
「大事に読むね!あ、私文才無いから…お返しはカ・ラ・ダ、でねっ!」
「!!!!」
「んふふっ、青根くんだーい好きっ」
火照った顔をした愛しの彼。
そんな青根くんのジャージを腰に巻きながら二人で教室へ向かったのだった。
end
久しぶりに書きました。
そして排球初めて書きました。
まんまとハマってしまいましたね!
新ジャンル追加です。
管理人は飛雄と青根くん、岩ちゃんにぞっこんなので三人が多くなると思います。
よろしくお願いします。