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□触れていいのは
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青根の彼女である名前はとても社交的で無口の青根とは正反対だった。
社交的であったからこそ青根にも別け隔て無く話し今に至る訳なのだが。
それにプラスして彼女はスキンシップも多い。青根はやっとこのスキンシップに慣れてきた。付き合いたての頃は腕を触られただけで肩を竦めたものだ。
「おっはー!二口!」
朝、校門で歩く名前を見つけた。が、彼女はまだこちらには気づいていないようだった。
「………」
彼女の手が二口の肩に触れる。
チクリ。
「ん?おー、うっす苗字 」
「さっむいねー…」
二口と並んでなにかを話しているようだが内容までは聞こえない。青根は何故か声を掛けづらかった。
「おー、二口に苗字じゃねぇか 」
「あ、鎌先さん」
「鎌先さんっ!おはようございます!」
「よっす」
「鎌先さん今日の腹筋の調子はどうですかあ〜?ふひひ」
「おぅ、絶好調だぜ…なっ!ちょっ!苗字触ん、 あっ…」
「変な声出さないでくださいよ気持ち悪い」
また、チクリ。
「あっ……」
「ふひひひ」
「苗字もやめろっ!きもいっ!」
「いでっ!何すんのよー!」
「っ、」
「ん?お、青根」
「!、高伸くんっ!おはようっ!!」
「ん…、?、おぅ青根、おっす」
鎌先に会釈をすれば、腕に飛び付いて離れない彼女にぎこちなく頭を撫でてみる。それに喜んだのかスリスリと顔を腕に寄せる名前。
あぁ、可愛い。
こうして触れていいのは――……
「鎌先さん、俺らお邪魔虫みたいなんで!先行きましょ!」
「あ?あぁ。苗字、俺の腹筋がすげーのは分かるが青根がいるんだから青根に……」
「はーい、行きましょうねぇ〜!」
「わっ、なんだおめっ、引っ張るな!」
二口と鎌先を見送れば名前が私達も行こう、とこちらを向いた。
「名前」
「ん?」
「あまり、」
「?」
「あまり他の男に触れないで欲しい」
「え、」
「名前が他の男に触れている所を見ると、胸がチクチクするんだ。理由は……っ…、………」
「高伸くん……」
「俺だけで、満足して貰えないか…」
「っ…!!」
顔が熱い。彼女が口を開いてこちらを見ている。恥ずかしい。早く昇降口まで行ってしまおう。そう思って足を出そうとした時だった。
「わっ、分かったよ高伸くんっ!!!私ずっと高伸くんにそんな思いさせてたんだね…、ごめんね?」
「!、っ!」
頭を振ればそれに対抗して名前の腕を掴む力が強くなる。
「ヤキモチ妬いてくれて、嬉しいっ…!」
向けられたその顔は、青根の一番弱くて、一番好きな笑顔だった。
「高伸くん大好きっ!!!」
先程までの胸の痛みは無くなり、ぽかぽかと暖かくなる。彼女のその一言で俺は幸せになれる、青根はそう確信した。
end
おまけ
「きー!朝っぱらからイチャイチャしやがって!」
「いやー友達が幸せそうで嬉しい限りですよ」
「お前、良いやつだな…」
「はははは」
「じゃあ私今以上に高伸くんにひっつくからね!!よろしく!」
「っ!!?」