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□与える、与えられる
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春の高校バレー。
伊達工業は青葉城西に2-0で負けたーー。


「あ、名前ちゃん」
「舞ちゃん、お疲れ様」
「こちらこそ、応援ありがとう。負けちゃったー!」
「このチームならもっと強くなるよ!」
「うん、先輩にも言われた。伸びしろしかない、って」
「ふふ、今後も応援させてください」
「ありがと……ていうかそれ青根に真っ先に言うことでしょー?もうちょっとしたら来ると思うから」
「分かった、ありがと!んじゃね」



マネージャーという仕事は大変だと思う。選手全員の事を考え、雑用もこなし、時にはアドバイスもする。…凄いなあ。

もちろん私も精一杯伊達工業バレー部の応援をしたつもりだけれど、やっぱり目で追ってしまうのは大好きな彼なわけで。



「あっ、青根くん!…っと」
「!」
「!…あっ、青根先輩俺先に行ってます」



見つけた青根くんの横には一年生のセッター君がいた。髪型がトサカみたいだから私は勝手にトサカ君と呼んでいる。ペコリとお辞儀をして去っていったトサカ君は、遠くで見てもそうだったけど間近で見ると更に大きく感じた。青根くんと同じくらい?あの子も今回凄く頑張ってたな。


「ねぇ!」
「っ!はい!?」
「お疲れ様、かっこ良かったよ」
「え?!、あ、ありがとうございます!!そそっ、それではっ!!」


「ありゃ、走ってっちゃった」
「………」
「ん、青根くんなんか機嫌悪い?」
「……………」
「ぷっ、ふふっ、ごめんごめん、意地悪し過ぎた。…、青根くん、お疲れ様」
「ん…」
「すっごくかっこ良かった、誰よりも」
「……」
「悔しいけどさ、伊達工はこれからまだまだ強くなるし、私も試合ある時はまた応援に来るから!…ってか全部行くし!」
「…、ふっ…」
「えー!なんで笑うのー!」
「…、ありがとう。 苗字の応援が俺の力になる」
「…!あー、やばい」
「?」
「今、すっごく青根くんにぎゅーってしたくなった」
「っ!?、!、っ!」
「あははっ、そんな慌てなくても大丈夫だよ、他の選手も周りにいるしさすがにっ…!、青根くん?ちょっ」



私の腕を掴んでズンズン前に進む青根くん。歩幅が広いから私も思わず駆け足になる。あれっ、これってもしかして…期待しても良いやつ?



「あっ、青根くんっ?」
「っ、悪い痛かったか?」
「大丈夫だけど…、えと…」
「…、こ、こなら問題ない、ぞ…」
「!!」



あぁ、もう、この人どんだけ私をときめかせれば気が済むの…!!



「…青根くんっ!」
「っ!、……」
「ふふ、青根くーん青根くーん!大好き!」
「………」



私を抱き止め頭を撫でてくれる彼はまだ汗の匂いが残っていて、少し興奮した、…なんて事はさすがに言えない。



「この後って皆どうするの?」
「学校に戻って練習だ」
「え!?試合さっき終わったのに!?」
「あぁ、感覚を忘れない内にな。先輩方も付き合ってくれる」
「そ、そっか…、それだったら準備して行かなくちゃだよね!ごめんね止めちゃって!」



青根くんは頭をぶんぶん振って嬉しかったと言ってくれた。少し寂しいけど青根くんのやる気を削いではいけないから、もう一度だけハグをして集合場所に向かう青根くんを見送った。




「……、ん〜!さーて!私も頑張ろーっと!」




これから更に強くなる伊達工業バレー部。私はその成長を見届けたい。そして、大好きな彼におめでとうって伝えるんだ。その日が来るまで待ち遠しくて胸が高鳴った。






end



おまけ

「たたたっ、田中さんっ!」
「どした日向」
「あっ青根さんが」
「あのでっけーいかついヤローか?なんだまた絡まれたんか?」
「いえっ、あのっ!さっき青根さんがっ、…可愛い女の子と抱き合ってました!!!」
「!!!!」
「羨ましいっす!でかいし可愛い彼女もいるなんて…!」
「日向……も、やめてくれ…俺の硝子のハートがっ…うっ…」
「た、田中さぁーん!!」

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