夢小説 魔術師の戦律

□ouverture(序曲) 黒衣の兄妹(中)
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 足の遅い輸送機では、敵に追いつかれるのも時間の問題であった。
 兄さんは眼鏡を外し、いつもの優しい糸目ではなく少し見開かれた、きりっとした目で帰ってきた。
 すでに戦闘モードである。

「これより、第200独立戦闘飛行隊はネウロイの一団と交戦、これを撃破する」

 つまりこういうことだ。
 兄さんはこの逃走劇がじれったくなってきたらしい。
 あれから、10分は経っている。
 ネウロイは牽制するようにビームを放つことはあるが当たる気配がない。
 ここは、もう少し援軍のウィッチを待つのが上策のはずだが……。

「敵は大型2、中型5、小型の数は分からないがいると思って間違いないだろう
 ユリアは先行し、これを叩け。
 俺は中間地点で、輸送機の護衛にあたりながら援護する」

 すでに隊長は決断していらしゃる。
 私たちの実力なら問題ないということだ。

「了解。カールスラントお得意の電撃戦を見せてあげようね!」

「ああ」

 答えるか否か、兄はロングコートを脱ぎ捨てる。
 こら、たたみなさい。
 口で言っても聞かないので、私がやるしかない。

 ロングコートを脱いだ兄の格好はというと、ウィッチの夜戦服に制服下は黒のハーフパンツ。
 私は同じウィッチの夜戦服に制服下は白のパン……ズボンを穿いている。
 ウィッチの格好はこれが普通なの。
 私が兄のロングコートまでたたみ終えると、そこにはすでに私のストライカーが用意されていた。
 
 正式名称、Originale Enlwicklug von Greiner-05 type-Multi
      プロトタイプ プレミアムエンジン付き

 よく言えた私。
 これは兄さんが使うF型の姉妹機。
 私のために作ってくれた、世界でただ一つの機体である。

「早くしろ」

 兄さんが水を差す。
 せっかく、私が力説をしていたのに。
 心の中で文句を並べながら、ストライカーを履く。
 そして、使い魔の耳としっぽを発現させ、MG42を手にした。 

 発射装置を乗せたリフトが私ごと上昇していく。
 外を見渡すと機体後方にネウロイの姿が。
 いつの間に。
 目測10キロを切る。
 これでは兄さんが焦っていたのも納得がいく。

「ティアム機、行きます!」

 私はネウロイに向け大空に飛び上がった。
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