夢小説 魔術師の戦律

□ouverture(序曲) 子犬と子猫と戸惑う鷲
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 私たちは兄さんを部屋に放り込んだ後、その足で滑走路に向かうことになった。
 ついてきているのは、宮藤さんに、リーネちゃん、それからトゥルーデの3人。
 坂本少佐に稽古をつけてもらうのを見るそうだ。
 見るだけじゃなくて参加すればいいのに……
 部屋で一緒だった、フラウとサーニャちゃんはいつの間にかいなくなり、エイラはそれを探しに行ったのだ。
 ちなみに基地の案内は兄さんが起きてから一緒にしてもらうことにしている。

「ユリアさん」

 元気にこちらを見上げる女の子。

「なに? 宮藤さん」

「扶桑の人以外で剣を使って戦う人は珍しいな〜と思って」

 丸っこい目を輝かせていう宮藤さん。

「確かにめずらしいけど、ペリーヌさんも使っているじゃない」

「そう言えばそうですね」

 忘れてました、と言わんばかりに照れ笑いを浮かべる彼女。

「でも、ペリーヌさんはネウロイを真っ二つ〜なんてしていませんでしたよ」

「そ、それは……いくらなんでも無理だよ〜」

「なんで?」

「レイピアは切るための武器ではないからな」

「えぇぇ〜」

 この子、喜怒哀楽がしっかりしているわね。

「なんだか優しい剣ですね」

 発想がすごい。

「違うぞ、宮藤。古来より剣というものはな――――――」

 トゥルーデの長い解説が始まった。

「リーネちゃん、この基地はいつもこうなの?」

「ええ。まぁ」

 苦笑いを浮かべるリーネちゃん。

「でも、いい基地よね」

 人当たりのいい人は多いし、設備は完備、統合戦闘団だから補給にも困らないだろう。
 何より古い遺跡を使って建てられたこの基地は風情がある。

「そうですね」

 リーネちゃんも満開の笑みで答えてくれる。

「――にして、いまに至るのだ! 分かったか、宮藤!」

 論点がずれていたであろうトゥルーデの熱弁が終わった。

「頭がぐるぐるします」

 かわいそうな宮藤さん。

「つまりはレイピアは突くことに特化した剣ということよ」

「なんだか分かったような気がします」

 大きな目が輝き始める。

「でも……」

 かと思うと、しゅんっと肩を落とす。

「やっぱり、人を傷つけるのための道具なんですよね」

「宮藤さん」

「私、人が傷つくのは嫌です」

 瞳に強い意志を宿らせる彼女。
 その意思は微笑ましくて眩しい。
 いつの間にか私の手は宮藤さんの頭へと伸びていた。

「ユ、ユリアさん!」

 そのまま、くせ毛のある彼女の髪の毛を撫で上げる。

「宮藤さんの言うことも分かるのよ。
 けれども、私たちはその道具でネウロイと戦うことができているのよ」

「そうですけど……」

「それにね」

 宮藤さんを強く抱き寄せた。

「道具はあくまで道具よ。人を傷つけるのも然り、人々を守るも然り。
 何のために使うかは、使う人次第なの。
 だからね、そんなに気負うことはないのよ」

 そこまで言うと腕の力を弱めた。

「分かった? 宮藤さん?」

 返事がない。
 腕の中を見るとぐったりとした少女がうつろな目でこちらを見上げていた。

「あら」

「み、宮藤ぃー!!」

「よ、芳佳ちゃーん!!」

 トゥルーデとリーネちゃんのひときわ大きな悲鳴が基地に響き渡ったのだった。
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