夢小説 魔術師の戦律

□ouverture(序曲) 整備士長 アルトリート・エックハルト
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「全く、ミーナもあそこまで怒る必要ないよな」

 僕はぼやきをこぼしながら歩く。
 きっかり一時間後、ミーナのお話(お説教)から解放された。
 我々の隊長殿は思考の自由すら奪うのだ。
 理不尽である。

「さてと……」

 気持ちを切り替え、前を向く。
 僕がいま向かっているのは、武器や弾薬の置かれているハンガー。
 
「あの子たちは元気かな?」

 そこに目的のものが置いてある。

「どこにあるのかな?」

 消灯された薄暗いハンガーに辿り着く。
 目的のものを探すべく僕は視線を巡らす。
 視線を巡らしているとライトの明かりがちらほら見えてきた。
 いくら経費削減のためとはいえ、この環境で作業させるなよミーナ。

「少しお時間宜しいでしょうか?」

 ライトが照らしている場所。
 ストライカーの整備をしている男性に話しかけた。

「誰だ? こんな時間に」

 顔を覗かせるのは強面の男性。
 金髪碧眼の容姿が欧米人であることを知らせる。

「なんだ、新入りか? まだ時間には早いぞ」

 手持ちのライトで僕の姿を照らす男性。
 そのうえで新入り扱いしてくる。
 今日着任したばかりだから新入りで間違えはないけど。

 取り敢えず、眩しいから止めてくれないか。
 僕は目を軽く手で覆って、ライトを下げるようにアピールする。

「まあ、いい。折角来たんだ、手伝っていけ」

 男性は足元に置いたある道具箱を指し示す。
 その態度に僕は苦笑を隠せない。

「俺が何かおかしいことを言ったか?」

 訝しむ男性。
 それもそうだろう。
 僕の着ている服は作業服である。
 加えて、向こうはただの新入りだと思っているので正体に気付くはずもない。
 
「いえ。整備の方を手伝わせて頂きますよ」

 面白そうだからこのまま突き通そう。
 僕は手持ちの荷物を近くの手すりに掛けた。
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