夢小説 魔術師の戦律
□ouverture(序曲) 第一回グライナー少佐対策会議
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第一回というからにはその次も、予定しているのだろうか。
先刻の出来事を説明していくミーナ。
それに補足を入れていく坂本さん、トゥルーデ、ユリアの三人。
ちなみに宮藤さんとリネットさんは厨房から出てきている。
「なんか、大事になっているな」
フラウは隣に座り、ニコニコしている。
「勘弁してくれ」
僕は頭を抱えたくなる。
シャワールームから出たあと、僕の整備士の宿舎まで行くという意見は、何故か満場一致で棄却されてしまった。
そのまま、折り合いがつかず食事の時間になるので、一同は食堂に向かうことになったのだ。
まさか、打ち切りになった話が全員が集まった食堂で再開されるとは思っていなかった。
「こんな似非紳士と共用するなんて、冗談じゃありませんわ!」
僕を指さし吠えるペリーヌ嬢。
似非紳士って、なんだかな……。
「落ち着けペリーヌ」
すぐに、坂本さんがなだめに入る。
「たとえ少佐が仰ることでも容認できませんわ!!」
猛狂うペリーヌ。
いま何を言っても焼け石に水な気がする。
「ペリーヌが少佐の言うこと聞かないなんて珍しいじゃん」
「そ、それは……」
冷や水を浴びせるルッキーニ。
なんだか強い衝撃を受けたペリーヌがしおれていく。
「ペリーヌは少佐にべた惚れだからナ」
「エイラさん!!」
エイラの妙な発言に机を叩き立ち上がるペリーヌ。
同性に惚れる?
……好きになるということはないだろうから…………ここで言うのは尊敬ということだろうか?
そうだと思いたいね。
「……エイラ」
エイラの隣に座っているサーニャちゃんが咎める。
「わ、分かったよ、サーニャ」
たじろぐエイラ。
この二人って意外と面白い関係なのかもしれないな。
「それでどうするんだ」
と、シャーリーがミーナたちに問う。
「そうね。……ここは、多数決で決めましょうか」
僕は驚いた。
こういうとき、大抵はミーナが決断するのだ。
みんなの意見を取り入れることもあるが、基本的に規則に沿ったと思われる独断に近い形でだ。
自身が追いつめられれば追いつめられるほどその傾向が強く感じれた。
あの撤退戦の後からは、それが顕著になったとフラウも言っていた。
だが、いまでは精神的余裕を感じることができる。
誰かが……いや、この部隊の存在が彼女を変えたのだろう。
そうであれば、なんて望ましい光景だろうか。
「グライナー少佐、何か意見がありますか?」
「いや、何もありませんよ」
険の入ったミーナの言葉を僕は両手を上げて否定する。
どこか考え事が顔にでも出ていたのだろう。
気を付けなければ。
「それでは、決をとります」
ミーナの案は三つの意見で決をとることになった。
一つ目は共用否定案。
簡単に言うと整備士の宿舎まで行けというやつだ。
僕的にはこれが一番助かる。
二つ目は共用妥協案。
時間を決めてその時間だけ僕専用のシャワールームと化す訳だ。
これはかっても悪いし、何より彼女たちに申し訳ない。
三つ目は共用案。
時間問わずいつでもシャワールームの使用ができるというやつだ。
僕の中では一番好ましくない案だ。
出会ったらとても気まずいだろ。
「共用否定案に賛成の人は挙手してください」
手を上げたのはトゥルーデ、ペリーヌ、リネットさんの三人。
僕も手を上げようとしたが上げられなかった。
理由は明確。
右腕にはフラウ。
左腕にはユリアが僕の腕を抑え込んでいる。
そして、正面には坂本さんの視線が僕を射抜いている。
どうして彼女たちは僕が整備士の宿舎まで行くことを拒むのだろうか?
「次に共用妥協案に賛成の方は手を上げてね」
この案に賛同したのは提案者のユリア。
それから、宮藤さんにシャーリー、ミーナの四人。
つまり残ったのが……。
「共用案に賛成する者は挙手しろ」
坂本さんを筆頭にフラウ、ルッキーニの三人。
さらに以外なことにエイラとサーニャちゃんの姿もある。
つまり、合計五人で共用案が最多数となっている。