Bed Room U
□第二十六話
1ページ/4ページ
荒廃した都市エリアに降り立った私はここに来る前、キリトとした会話を思い出していた。
ーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「え、先に合流しないのか?」
私は自室のパソコンでアバターの調整をしながら本戦が始まってからの事を和人に話していた。
『集合するにしても私たちが離れていた場合、それは時間のロスでしかないだろう。
だったら、シノンを探しつつ移動して出会ったプレーヤーを倒して行った方が効率が良い。後々横槍が入らんとも限らんしな。
それに、合流についてはシノンを目指して行けば自ずと出逢えるだろう?』
パソコンから目を離さなず告げる私にキリトは少し不満そうだ。
「それは、そうだけど……」
そんな和人の様子にふっと笑みを一つこぼすと、私はパソコンから視線を外し、和人の方を振り返った。
『心配しなくても、一人でどうこうしたりはしないよ。私だって、早く和人に逢いたいしな。』
そう告げると、照れたような仕草をする和人が妙に愛おしくて、思わず口元が緩んでしまう。
これが惚れた弱みなのだろうな。
そんなことを考えていると、和人が何かを閃いたような顔をした。
何故だろう。嫌な予感しかしないんだが。
「………なぁ、咲月。勝負しないか?」
『勝負??』
「どっちが先にシノンを見つけられるか。で、負けたら勝った方の言う事を何でも聞く。」
こういう時の和人が出す勝負って、私が勝った覚えがないんだが………。
ふむ……と考え込んでしまった私を、和人は真っ直ぐに見つめてくる。
そして結局私の方が折れ、その勝負を受けることになったのだった。
頼むから、無茶なお願いはしないでくれよ………
ーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
と言うわけで、私は現在廃墟であるビル群が立ち並ぶエリアに居る訳だがーーーー此処からシノンの所に行くには些か遠すぎる上に、敵が多い。
確実にキリトの方が早く着くだろう。
どうするか迷っていると、僅かな殺気と共に隣のビルから銃弾が此方に向かってきた。
ふむ。私に喧嘩を売るか。そうか………………………………………………………………………………………………………高値で買い取ろうじゃないか。
きっとあの2人は死銃を追ってこっちに来る。その間の暇潰し兼憂さ晴らしになって貰おう。
因みに今回、私は幾つかの情報を菊岡にメールして伝えておいた。
それは今回参加する大会メンバーの住所と名前だ。
入手経路は………まぁ、後で説明するとして。
そのメンバーリストには赤丸が付いているものがある。
死銃………いや、死銃に加担しているメンバーに狙われる可能性があるプレイヤーの名前だ。
ただし、死銃に撃たれるまでは手出ししないように告げてある。
何故ならその前に現場に現れてしまったら、犯人たちが逃亡する恐れがあるからだ。
危険なのは百も承知だ。きっと、下手をしたら生存確率は格段に減るだろう。
だからこそ、私は可能性の話だと言うことも含めて、どういう方法で奴等が殺しているのかを話した。
それについての対応策も一緒に付け加えて。
今回ばかりは菊岡にも負担を強いることになるだろうが、まぁ、奴なら大丈夫だろう。
なんせ、依頼人は奴なのだから協力して貰わねば困る。
そしてアンジュは不敵な笑みを湛え、撃ってきたプレーヤーや、道を阻む輩を次から次へと斬り伏せたのだった。
此方を見ている赤い目の存在にも気付かずに。
.