東方蒼天葬〜その歪みを正すために〜
□絆繋がり、姉弟は再会する
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「お!目が覚めたのか?」
窓の外を眺めながら呆然としていた千冬の背後から声がかけられる。
驚いて振り向くとそこにいたのは昨夜一夏と一緒に行動していた少女、霧雨魔理沙だ。
「お、お前は……痛っ……」
一夏の行方を知る人物に冬は駆け寄ろうとするが腹部の傷がそれを許さず、傷口を押さえて呻き声をあげる。
「おい、まだ動くなって。傷口開くぞ」
「い、一夏は?一夏はどこにいるんだ?」
「今止血剤買いに行ってる。それまで安静にしとけ。ほら、スープ持って来たぜ」
千冬を支えながら布団まで運び、盆に載せたスープを千冬に手渡す。
「ああ、すまない。……お前の名前は?」
「霧雨魔理沙、普通の魔法使いだ!」
「……は?」
突然魔法使い等と言われ、流石の千冬も間の抜けた声を出してしまう。
「いや、『は?』って随分なご挨拶だな……まぁ、とりあえずスープ飲めよ。冷めちまうぜ」
「あ、ああ」
些か戸惑いながらも千冬は出されたスープを口に運ぶ。
舌先に触れると鶏がらで取った出汁と刻まれた野菜の味が口の中に広がる。
今までに飲んできたスープと全然違う味だがどこか懐かしさを感じさせるものだ。
「これ、作ったのは……」
「一夏だぜ。美味いだろ?」
予想通りの答えにやはりと思うと同時に嬉しさが込み上げてくる。
一夏の作った料理……もう二度と味わうことは出来ないと思っていた味……思わず涙が零れそうになり、涙でスープの味が変わらないように器に口をつけてスープが零れるのも気にせず胃の中に流し込む。
「おいおい、慌てて飲むなよ」
「すまない……っ……」
押し隠してはいるものの千冬が泣いている事を魔理沙は察し、それ以上口を挟む事は無かった。
「それじゃ、私は下に降りるから、詳しい事は一夏に聞いてくれ」
それだけ言って魔理沙は部屋を出た。