東方蒼天葬〜その歪みを正すために〜
□ライバルとの邂逅
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「『斬符・樹鳴斬!!』」
千冬から繰り出された斬撃が一夏目掛け一直線にレーザーの如く撃ち出される。
「!?」
驚きながらも自分に向かって伸びてくるレーザーを回避する一夏。
しかし直後にレーザーは枝分かれするように分裂し、さらにそこから魔力弾が飛び出す。
その姿は樹鳴斬という名の示す通り一本の樹が鳴き声をあげるかのような様相だ。
「千冬姉、いつの間にスペルカードを!?」
「以前から密かに研究していたんだ!お前に少しでも追いつくためにな!!もう一発喰らえ!!」
一撃目のレーザーが消滅すると同時に即座に千冬は二撃目に移行する。
(こりゃ、ちょっとヤバイかもな……)
千冬から放たれる拡散レーザーと魔力弾を回避しながらこの技(スペルカード)を打ち破る方法を考える。
スペルカードを打ち破る方法は2つ、スペルカードの効果が切れるのを待つか、相手にダメージを与えてスペルカードを維持出来なくさせるかだ。
「しょうがない……もうちょい出し惜しみしたかったけど、見せてやるぜ!!」
攻撃をかわしながら一夏も懐から一枚の札を取り出し、同時に己の右拳に凄まじい量の魔力を蓄える。
「行くぜ千冬姉!『砕符・デストロイナックル!!』」
一夏の拳から大型レーザー型の魔力弾が放たれ、千冬の魔力弾とぶつかり合う。
しかしぶつかり合ったのは数秒間だけで瞬く間に一夏の魔力弾が千冬の魔力弾を飲み込み、千冬に迫りくる。
「クッ!」
自分の魔力弾を無効化され、千冬は思考を攻撃から回避に素早く切り替え、その場を離れようとする。
「まだまだぁっ!!」
しかし一夏の拳から先ほどと同等の威力を持った魔力のレーザーが二発、三発と続けざまに繰り出される。
「な!?(この威力で連射だと!?)」
一夏のスペルカードの性能に内心驚愕しつつも千冬は必死に二発目のレーザーを紙一重で回避する。
(く、クソッ!間に合わない!!)
しかし三発目は避けきれず、千冬は武器である大剣を盾の代わりにしてかろうじて受け流す。
「もらった!!」
「!!」
レーザーを防いだ千冬だが、その隙を突き一夏が一気に接近する。
「だああああーーーーーーっ!!!!」
一夏の左手から繰り出されたパンチが千冬の大剣を弾き飛ばし、直後に右ストレートが千冬の顔面を捉える。
「っ…………」
しかしその拳は千冬に打ち込まれる事無く顔面に命中する寸前に動きを止める。
この時点で勝敗は確定した。
「続ける?」
「いや、私の負けだ」
冷や汗を流しながら千冬は苦笑し、自らの敗北を受け入れたのだった。