東方蒼天葬 弐
□魔界へ一直線
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聖蓮船は今も尚、目的地へ向かって航行を続け、到着も間近に迫っていた。
そして船の周囲では……
「《転覆『道連れアンカー』!!》」
「《秘術『グレイソーマタージ』!!》」
霊夢、魔理沙、早苗の三人が聖蓮船の乗組員達と戦いを繰り広げていた。
「くぅっ……雲山!!《鉄拳『問答無用の妖怪拳』!!》」
「ぬぅううんっ!!」
「いくら図体でかくったって、こっちは一夏相手に拳骨攻撃なんて慣れっこなんだぜ!《恋符『マスタースパーク』!!》」
一輪の使役する入道、雲山の巨大な拳と魔理沙のマスタースパークがぶつかり合い、鬩ぎ合う。
「《視符『ナズーリンペンデュラム』!》」
「《宝塔『レイディアントトレジャー』!!》」
「甘いわよ!《霊符『夢想封印』!!》」
霊夢はナズーリンと星の二人掛かりの攻撃を自らのスペルで相殺する獅子奮迅の活躍ぶりを見せる。
「ハァ、ハァ……つ、強い」
「一人一人が私達と互角以上だなんて……」
霊夢たちの猛攻に星達は一度聖蓮船の付近に集まり、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
目的地である魔界の一角、法界への到着まであとわずかというところで躓いてしまったのはかなりの痛手だ。
「星……私が合図したら船に飛び込んで」
「村紗?何を……」
村紗からの思わぬ言葉に星は思わず大きな声を出しそうになる。
「良いから聞きなさい!もうすぐ魔界への扉を突っ切る。そうすればこいつらだって簡単に追ってはこれない。宝刀を持ってるあなたさえ居れば聖は復活できます」
「なるほどね。私たちが囮になって星は姐さんの復活……良いわ。その作戦私達も付き合う、良いわね雲山?」
「…………」
村紗の意図を読み取り一輪が真っ先に了承し、雲山も無言で頷く。
「まったくもう……柄じゃないけど、私もやるよ。一応私だってご主人の部下だからね」
「アナタ達……恩に着ます」
さらにナズーリンも賛同の意を示し、星は思わず涙を零しそうになりながらも感謝の言葉を漏らす。
「ココで一気に決めるます!!」
直後に村紗は大声でアピールするかのように全員に呼びかけた。
「《湊符『ファントムシップハーバー』!!》」
「《拳符『天綱サンドバッグ』!!》」
「《捜符『レアメタルディテクター』!!》」
3人のスペルカードが一斉に発動し、霊夢たちに降りかかる。
「星!行って!!」
そして放たれる合図。直後に星は背を翻し、聖蓮船の内部へと飛び込んだ。
そして直後に船は魔界への結界へと突っ込んでいった。
「ちょっと、まさか!?」
「魔界に突入する気!?」
「まずいぜ。あそこに入られたら追いかけられない!!」
村紗達のスペルを迎撃する中、霊夢達は船の向かう先に気付くが、最早それを追い駆けることの出来る状況ではなかった。
しかし、この時一つの影がこの場へと接近していた。
「霊夢、魔理沙、早苗!そこを退け!!」
「「「千冬(さん)!?」」」
その影の正体は千冬。エリザとの戦いを終え、ギリギリの所で霊夢たちの戦いに間に合ったのだ。
「クソ、逃がしはせんぞ!(一夏のように上手くいくかは分からんが……やってやる!!)」
魔界へと逃げる船を睨み、千冬は右拳に魔力を一気に込め、直後に振り返り、聖蓮船に背を向けた。
「《砕符『デストロイナックル』!!》」
一夏のスペルカードを直接真似て発動される千冬のスペルカード。
拳から放たれる魔力のレーザー砲、その反動で千冬は聖蓮船、そして魔界へ一直線に突撃する。
「ちょ!?私、斜線上に……ギャン!!」
しかも偶然斜線上に居た早苗を巻き込んで……。
「あ゛あ゛ーーーーっ!!」
早苗の悲鳴が木霊しながら千冬と早苗は聖蓮船の船腹に突っ込んでしまったのだった。