つよきす愛羅武勇伝・鉄乙女編

□特訓!!
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乙女SIDE

 拳法部での仕事を終え、私はそのまま実家へと戻った。
実家に戻って最初に行わなければならないことがある。私の祖父、鉄陣内(くろがねじんない)への挨拶だ。
「爺様……鉄乙女、修業の為ただいま帰りました」
「乙女か、話は既に聞き及んでいる。主の目的、対馬レオとの闘いであるな?」
「はっ!かつての敗北を糧に雪辱を晴らすべく、己を鍛え直す次第であります」
「うむ…………乙女よ」
 突然時事様は私の顔を覗き込む。
「何か?」
「いい面構えになったのぅ」
「え?」
 唐突にそんなことを言われ思わず困惑してしまう。
「好敵手を得たからか?」
 好敵手……か。確かにあの戦いの後、私もレオもさらに強くなったと思う。
アイツに負けたのが悔しくて、もっと強くなりたくて……修行に明け暮れた日々を思い出し、忘れかけていた『高みを目指す心』を再び燃え上がらせた。
「そうかもしれない……いえ、きっとそうです!私はレオに勝ちたい!そしてもっと強くなりたい!!そう思うようになったのはレオのおかげです」
「フフフ……その意気や良し!!すぐに着替えい、修行を始める!!」
「はい!!」
 すぐさま胴着に着替え、修行の準備に入る。
覚悟しておけレオ、私は今より更に強くなってお前との戦いに臨む!!



レオSIDE

 さて、さっそく家に戻って修行の準備に取り掛かるわけだが、相手はあの乙女さんでしかも鉄家直々の修行を受けるはず。生半可な修行じゃとても勝ち目は無い。
「となると、手は一つだな」
 俺は携帯を取り出してある男に電話する。
「よし、大体こんな所か」
 一通り電話をかけ終えた俺は、奴らとの待ち合わせ場所へと足を進めた。



 数十分後 とある峠にて

 待ち合わせ場所に選んだこの峠は急カーブが多いため走り屋からも敬遠されている人通りも少なく、喧嘩にはうってつけの場所だったりする。
そんな峠に俺は原付で先に到着し、待ち合わせていた奴を待っていた。そして数分後にそいつはやってきた。
「お、来たか」
「来たかじゃねーよ、巴姉とデート中だってのに呼び出しやがって」
 茶髪に中性的な顔をした男が近付いてきて早々悪態をつく。
「良いだろ別に、俺が電話した時だって丁度ナニを済ませてたくせに」
「ま、そうだけどよ」
 こいつの名前は柊空也(ひいらぎくうや)、以前は俺と地下闘技場で鎬(しのぎ)を削りあった階級違いのライバルでかつてはスーパーウェルター級のチャンピオンだった男だ。ちなみに流派は極限流空手。
現在は鎌倉の実家に帰郷しているため狂犬(クレイジードッグ)の闘技場からは引退しているが、鎌倉の繁華街に存在する格闘バー『PAOPAOカフェ日本・鎌倉支店』のチャンピオンに君臨している。
あとこれはまったくの余談だがコイツには血の繋がりの無い姉が6人いて、コイツの彼女はその四女だとか……。
「で、何の用で俺を呼んだんだ?まさか旧交を暖めようなんて訳無いだろ?」
「ああ、実は今度の金曜にデカイ勝負があってな、それまでにどうしても実力を付けておきたいんだ」
 俺の答えに空也はニヤリと笑う。
「なるほどな、さしずめ俺はそのスパーリングパートナーって訳か?しかも毎日」
「ああ、更に加えるなら物凄くハードな。ついでに言うならお前とも久しぶりに戦(や)りあいたかったからな……錬の奴も呼ぼうとしたんだが、あいつ結婚式控えてるし……」
「ああ、そういやアイツもうすぐ式だったな……まぁいい、戦(や)ってやるよ」
 そこから先は言葉など要らない。お互い服を脱いで上半身裸になって構える。
「行くぜスピード狂野郎」
「ああ、来いよ近親相姦野郎」
 お互い同時に踏み込んで会心の一撃を叩き込む。
(相変わらず重いパンチだぜ。しかも腕は落ちてないどころか上がってやがる)
(コイツまたスピード上がったんじゃねえか?)
 なんて事を考えながら俺達は戦い続ける。
「《修羅旋風拳!!》」
「《飛燕疾風脚!!》」
 俺の旋風拳に空也は気を纏った跳び蹴りで応戦し、お互いの技は相殺される。
「チッ、腕は鈍ってないって訳か」
「そっちこそ、伊達に現役続けてないってか?」
 軽口を叩きながらも俺たちの攻防は続く。
「《ライジングタックル!!》」
「《虎咆(こほう)!!》」
 今日から武道祭まで毎日、飯と寝る時間以外の全てが修行だ!!
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