東方蒼天葬〜その歪みを正すために〜
□絆繋がり、姉弟は再会する
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絆繋がり、姉弟は再会する
「う……ん……」
窓から差し込む日の光に照らされ、千冬は意識を取り戻す。
(私は、どうなったんだ?確かあの時私は刺されて、それで……)
まだハッキリしない意識の中、千冬はゆっくりと昨夜の記憶を蘇らせる。
(そ、そうだ!!あの時一夏が助けてくれて、怪我をしている私を介抱してくれて、それでその後一夏と一緒にいた少女に私は担がれて、その後は……)
そこで記憶は途切れている。それもその筈だ、千冬は担がれて移動する途中で意識を失ってしまったのだから。
しかし千冬にとっては今はそんな事どうでもいい。
「い、一夏!」
あの時自分をナイフを持った女から助けてくれた最愛の弟を思い出し、千冬は布団から飛び起きる。
「う!ぐぅぅ……」
刺された傷から痛みが走り、千冬をより一層現実へ引き戻す。
「夢じゃ、ないんだな……一夏は、生きている」
しかしその痛みも昨夜の出来事が夢ではない事の証拠。今の千冬にとっては嬉しい痛みだ。
すぐに一夏を探そうと立ち上がるが……。
「ココは何処だ?」
目の前の見知らぬ部屋を見て千冬は現実に引き戻された。
ひとまず外の様子を見ようと窓を開けてみるがそれを見て千冬は更に驚愕する。
「な、何だ?此処は……」
目の前に広がるのは緑豊かな森、そして別方向の少し離れた所にはいくつかの家らしきものが並んでいる。
そのどれもが千冬にとって異様なものだった。
近代化の進んだ現代とはまるで違い、そこにはマンションや鉄筋コンクリートの建物などまるで見当たらない。
森にしても開発の進んだ現代日本でこれだけ立派(?)な森は自然公園に行ったって見れない。
この光景にまるで自分が明治時代辺りにタイムスリップしたような錯覚に陥ってしまう千冬だった。