東方蒼天葬〜その歪みを正すために〜

□冷めぬ想い
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冷めぬ想い

 千冬が己の罪を告白してから暫くして一夏は食事の準備に入り、千冬は一人、一夏の部屋でこれからどうするのかを考えていた。

「やはり男にも乗れるISを作らない限り女尊男卑はどうしようもないか」

 自分の罪を清算するには自首するだけでは駄目だ。世界を元の男女平等に戻さなければならない。
元ブリュンヒルデである自分が男女平等を訴えれば多少は効果はあるだろうがそれも所詮は一時的でしかないし完全ではない。
男性に使用できるIS……これが必須事項だ。

「やはり、束に直談判しかないか……」

 現在の政府の持つ技術ではISコアの解析はほぼ期待出来ない。
それに加え、コアの解析によって男にISが使えるようになるとなればIS委員会の保守派(男を見下すしか能の無い女達)は絶対に妨害してくる。
つまり、コアの解析が出来るだけの技術と誰にも邪魔されない場所を持つ(または知っている)人物。
これに該当するのは千冬の知る限り束しかいない。

「しかし、アイツがそれに応じるかどうか……」

 正直分からない。いや、むしろ応じる事無くはぐらかされる可能性が高い。
元々篠ノ乃束という女は特定の人物(千冬、一夏、そして束の妹である篠ノ乃箒)以外に対して異常なまでに無関心だ。
それに疑問もある。なぜ女にしか使えないという致命的欠陥を抱えたままISを世に発表したのか?
基本的にパワードスーツ等の機械は男女の区別なく使えるようになって初めて完成と言えるのだ、それが女にしか使えないという未完成とも言える状態で世に出すというのはあまりにもおかしい。
仮に当時何らかの理由で早くにISを発表する必要があったとしても彼女ほどの頭脳があればすぐにとはいかずとも男性用ISを作ることも不可能ではない筈だ。
しかし彼女はそれをしなかった。
ここまでくると親友として考えたくはないが作為的なものを感じる。

「千冬姉、飯の準備出来たよ」

「ん?ああ、今行く」

 一夏からの呼び出しに応え、千冬は今へ向かう。
そこには一夏が作った料理が並んでいた。

「ずいぶん豪勢だな」

「まぁ、再会できたんだし。今まで会えなかった埋め合わせも兼ねてな。それにこっち来てレパートリーも増えたから、折角だから千冬姉にも食ってもらいたくて」

 ちなみに一夏の現在の料理の腕前は外界にいた頃と比べ格段に上がっている(洋食と中華が)。

「それじゃ、冷めない内に食おうか」

「ああ……いただきます」

 食卓に着き、千冬は一夏の手作り料理を口に運ぶ。
もともと一夏の作る料理は美味かったが以前より腕が上がっているためより美味くなっている。
そして何よりも懐かしいという想いが料理の味をより引き立てた。
思えばこの一年間碌な食事など食べていなかった。
コンビニ弁当ばかりで当然といえば当然だが、やはり一夏がいない孤独感というのが一番の原因だろう(そんな食生活でプロポーションを維持出来ているのもある意味すごいが……)。
その日の夕食は千冬にとってはいままでの食事の中で最高に有意義な時間だった。
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