東方蒼天葬〜その歪みを正すために〜

□千冬唖然!これが河童の技術力!!
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 時刻は午前7時。一夏はいつもの日課通り起床し、台所で朝食の準備をするため起き上がろうとする。

「……ん?」

 しかし、そこで一夏は違和感を覚える。妙に体が重いのだ。
何事かと思い隣を見てみると……。

「ぬおっ!?千冬姉ぇ!?」

 なんと千冬が自分の体にしがみ付いていたのだ。

「zzz……」

 しかも本人はまだ夢の中である。

(や、ヤベェ……胸が当たって…………って何考えてんだ俺は!?相手は実の姉だぞ!!)

 頭を振って昂ぶる煩悩を無理矢理振り払い絡まっている千冬の腕と脚をはずしにかかる。
しかし予想以上に柔らかい女の肌に一夏は思わず意識してしまう。

「何興奮してんだよ俺は……」

 姉に対してその手の興奮を感じてしまった事を少し悔やみながらも一夏は千冬の体を離し、食事の準備のためにキッチンへ向かった。

(にしても……なんかさっきから口の辺りに妙な違和感が……)



 その後、朝食を作り終えて千冬を起こし、朝食の米と味噌汁とハムエッグを食べる。

「ところで一夏、例のコアを解析出来るという者達とはどんな奴等なんだ?」

「妖怪の山に住んでる河童だよ。その中の一人と友達だから」

 一夏の言葉に千冬は思わず持っていた箸を落としそうになる。

「か、河童ってあの河童か?」

 躊躇いがちに千冬は一夏に訊ねる。
おそらく千冬の頭の中にはよく漫画に出てくるような緑の肌に黄色い嘴、頭には皿を乗っけた生物を思い浮かべているだろう。
それを察して一夏が口を挟む。

「……何を思い浮かべてるのか大体想像付くけど、それ違うから」

「そうなのか?」

「うん、妖怪って言っても外見は人間と大して変わらないぜ。ちょっと待ってて」

 そう言って一夏は自室から写真を持ってくる。
桜の花をバックに一夏や魔理沙、その他にも多くの者たちが写った写真だ。

「え〜と……あ、居た。ほらこの子」

 一夏が指差した写真の部位に千冬は目を向ける。
そこに写っているのは青い髪にドアキャップにも似た帽子を被り、瞳は真紅の色をし、蝙蝠の様な羽を背中に生えさせ、ピンクの服を着た小柄な少女。
その隣には先ほどの少女同様ドアキャップを被り金髪の髪をサイドポニーに結い、真紅を基調とした服を纏い、背中には枝のような羽を生やしている少女が一夏のすぐ傍に写っていた。

「この青い髪したのがレミリア・スカーレット、隣の金髪の子がレミリアの妹のフランドール・スカーレット。この二人も妖怪だ、種族は吸血鬼。湖の方にある紅魔館っていう屋敷に住んでて、レミリアはそこの主だ」

「この子達が?(確かに羽以外は人間とほとんど同じだ)」

「うん、幻想郷(こっち)に来て3ヶ月ぐらいした頃に知り合ったんだ。まぁ、最初は敵同士だったけどね。あ、ちなみにこっちのメイド服着たのがその時俺が戦った十六夜咲夜。紅魔館のメイド長をしている」

 そう言って今度はレミリア達の近く(一夏のほぼ隣)に写る少女を指差す。
綺麗な銀色のプラチナブロンドのショートヘアを顔の両側で三つ編みにし、青を基調としたフランス式のメイド服、整った顔つきで『クール・ビューティー』という言葉がよく似合う美少女だ。

(コイツは……間違いない)

 一夏に惚れている……千冬の中にある女としての勘がフル回転してそう告げる。
素人目には分からないが彼女は一夏の隣で一夏の方を見ながら少しではあるが恥じらっている。よく見ると頬も僅かに赤い。
自分の弟ながらなんと恐ろしい天然超S級フラグ建築士。幻想郷でもすでに女を一人落としているとは……。

(くぅ〜〜……外界ならいざ知らずこっちでも一夏に惚れる女が現れるとは……しかも元は敵同士にも拘わらず……この尻軽メイドめ!!)

 自分もその一夏に落とされた一人であることを棚に上げて酷い言い様である。

(いかんいかん……落ち着け。私は姉、私は姉なんだ)

 必死に苛立ちを抑え付ける。
自分は姉……実の姉だ。決して結ばれる事は無い。昨夜のキスで満足するべきだろう。
しかしそう思うと気持ちが暗くなってしまう。
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