東方蒼天葬〜その歪みを正すために〜

□飛行訓練とラブコメ展開
1ページ/2ページ

 千冬が一夏の家で正式に暮らすようになって2週間程が経過した。
千冬の体に巻かれていた包帯はもう既に取り外され、自由に動けるほどに回復していた。
さすが元ブリュンヒルデと言うべきか、千冬の回復力はかなりのものであり、それに加え魔理沙が持ってきてくれた傷薬の効果も抜群のため、ナイフで刺された傷は一週間という速さで完治したのだ。

「どうだ?昨日よりだいぶ高く浮くようになったぞ」

「おお、本当だ!この調子ならあと一週間ぐらいで自由に飛べると思うぜ」

 そして今、千冬は魔理沙による指導の下、魔力のコントロールの特訓中であった。
当初は一夏だけで指導していたのだが、どこで話を聞きつけたのか魔理沙も指導に参加すると言い出し、現在は一夏と交代で千冬の指導を行う事になった。
ちなみに、一夏は現在仕事に出ているため魔理沙が指導を担当している。

「しかし、大分マシになったとはいえ、こんなに体力を使うとは……」

 休憩に入り額に汗を浮かべて千冬は地面に降りて水筒に入った水を飲んで水分を補給する。

「仕方ないぜ。慣れない内は魔力を余計に消費するから、体力にも負担が掛かるんだ。実際私や一夏だって最初はそうだったぜ」

「ああ、分かっている……しかし一夏の奴、たった一年であそこまで強くなるとはな……」

 千冬は思わず遠い目になる。
一夏の戦闘力は肉弾戦、弾幕戦問わず非常に高い。
元々弾幕戦には高い集中力と反射神経、そして体力が要求されるため、魔力で体を活性化させ、集中力を持続させ、反射神経を高める必要があり、それに耐えうる程度の肉体を作る必要がある(ただし、活性化と同時に回復魔法で負担を軽くするという方法もある)。
それに加えて一夏の場合、一夏の持つスペルカードのいくつかは一夏自身の生身の攻撃力に比例して威力が増えるので、それを最大限活かすための肉体鍛錬は必須事項なのである。
その上、妖怪退治やら異変解決やらで修羅場を潜ったという事もあり、一年という期間で一夏の戦闘力は生身だけでも千冬と互角以上にまで成長していた。

 それを知った千冬は数日程前に一夏と組手をしてみたがその結果は敗北。
いくら一年間も自堕落な生活を送っていたとはいえ、これでは正直言って元ブリュンヒルデの面目丸潰れも良い所である。

「せめて、守られるだけでなく、お互い守りあえるぐらいにはならないとな……魔理沙、続きを頼む」

 軽い休憩を終えて千冬は再び立ち上がって魔力を体中に循環させ、再び浮遊した。

「よ〜し、今度はそのまま前に進んでみろ」

「よし……」

 ISを使用していた頃を思い出してゆっくりと前に進む。
元々千冬はISで飛ぶという事に慣れていたのでこれは割と難無くこなせた。

「移動は問題ないか。となると魔力の消費を抑えるのに重点を置くべきだな……よし千冬、その状態を維持しろ。そうすれば魔力のコントロールにも慣れるはずだぜ」

「わかった」

 空中に浮き続けながら千冬はゆっくりとではあるが移動を続ける。
ある時は前に前進し、時折方向転換や後退を交えながら飛行を続けた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ