東方蒼天葬〜その歪みを正すために〜

□ライバルとの邂逅
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「よし、いつでも良いよ千冬姉」

「こっちもだ、今日は前回のようにはいかんぞ」

 時刻は朝の6時半。
万屋の近くの森の上空で一夏と千冬は対峙し、お互いに構えあう。
一夏は徒手空拳、千冬は身の丈ほどはある大剣を武器にしている。
千冬が幻想郷に滞在して1ヶ月。既に飛行術と魔力コントロールを習得した千冬は自ら志願してスペルカードルールの特訓を行っていた。
その理由は本人曰く『弟に食わせてもらうだけでは姉として情けないからな。私も万屋の仕事を手伝うくらいの実力は欲しい』との事だ。

「行くぜ!」

 先に動いたのは一夏。即座に拳から散弾銃のように広範囲に魔力の弾幕をマシンガンのように連射する。

「はぁっ!」

 迫りくる弾幕に千冬は大剣を右手だけで軽々と振り上げ、魔力弾を薙ぎ払い、そのまま空いた左手で弾幕を一夏目掛けて放つ。

「甘い!ずあぁっ!!」

 しかし一夏も素早く身をかわし、直後に魔力を拳に一気に集中させて先程の倍近くの速度と威力を持った魔力の弾を放った。
しかもそれは一発だけではなく、先程の弾幕ほどではないにせよかなりの連射速度だ。

(クッ……一発一発がデカイ上に威力が強すぎる。片手で捌けるような弾じゃない!)

 繰り出される強力な魔力弾の数々を必死で避ける千冬。
しかし少しずつ逃げ場を削られ、次第に千冬の額に浮かぶ汗の量が増えていく。
千冬側も弾幕で必死で応戦するが、一夏は弾幕の隙間を次々と掻い潜る。

(やはり、IS戦とは全然違う。弾幕の多さも攻撃力とその規模も……何よりISと違って絶対防御なんていう甘いものが無い……)

 そう考えると千冬は自分の事が滑稽に思えてしまう。
ISに守られて頂点を極めていたつもりになって居た自分も幻想郷に来てしまえば所詮は『優秀な初心者』でしかない事を痛感する。

(だが……いつまでも私が手も足も出ないと思ったら大間違いだぞ、一夏!!)

 一夏の弾幕を必死に捌きながら千冬は一枚の札を取り出す。
密かに研究して昨夜遂に完成したオリジナルのスペルカードを……。
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