作品(Normal)

□6,捕まえて、海の中
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よくもまあ。あれだけはしゃげるもんだと思う。
つって、じゃあ俺がはしゃいでないかと問われれば、浮かれているとは答える。

波打ち際を、両手に1個ずつ靴をぶら下げて、裸足のまま歩いていくスクアーロ。
ゆったりめの黒いズボンを膝まで折り返してるから、ふくらはぎも足首も日差しに晒されて、いつもより白さが目立つ。
ノースリーブのシンプルな白のシャツは、腰のラインも露わで眩しい。
大き目の襟元は胸の下までザックリと切り込みが入っていて、白い皮紐で編まれている。
何だろソレ。誘ってんのかな。
でもまだ、もう少し眺めていたい。
銀色の髪が夏の太陽を跳ね返して、うねる清流のように光り輝いている。
波のキラキラなんか目じゃないね。
でも飛沫が髪を彩っているのは確か。

ただでさえ足が長いのに、躍る心がそうさせているのか。
速い足取りで歩いていくから。
離されないよう、
息が上がらないよう、
焦ってるなんて気取られないよう、
追いかけていくのは至難の技。

でもやってのけちゃう。

だって俺王子だもん。

やがて波打ち際は岩に遮られて、浜辺から続く草原と森林に取って変わられる。
そのぎりぎりのラインまで足跡をつけていったスクアーロは、ワルツみたいにして振り返った。

銀が、キラキラ。

俺を見つけた顔がキラキラ

(輝いて見えるのは恋人の欲目ってやつかもしれないけど。もしくは願望?)

振り返るときに、足元を見詰めて、少し見え難かったけど、楽しそうだった(と、思う)顔を、もっと楽しそうな笑顔にして。
だけどそのまま俺の隣をすり抜けたスクアーロは、また海岸線をまっすぐ歩いていく。
今度はたぶん反対側の終わりまで歩くつもりだ。

何が楽しいんだろう。訳わかんねーし。
じゃあ、付いてくだけの俺は楽しくないのかと聞かれれば、浮かれているとは答える。

なんでって。そりゃ。


久方ぶりの、二人旅、っていうやつ。


だから。




‡捕まえて、海の中‡
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