夢のなかへ

□1番高い場所で(前編)
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恋をしています。

寝ても覚めてもあなたのことばかり考えています。

だから一回や二回フラれただけじゃ、寧ろ十回百回フラれたって、諦められないんです。


友達に何度あんな奴はやめときなって言われても以下同文!







[1番高い場所で(前編)]








いつもの階段を駆け上がって

胸をドキドキさせながら

ギィ

相変わらずたてつけの悪い扉を押す


まだ肌寒い外の風が私に向かって吹き抜けた



「…いない」


あぁそれだったら、この上だ

私は横にある梯子に手をかけた

二人分のお弁当がちょっと邪魔だけど、登れないことはない。




「ヒーーール魔っ♪」


ほら、やっぱりいた!

私のお目当ての意中のヒトは、面倒臭そうに私を振り返る


「…今日も来たのか」
「当たり前っしょ!」


えへへ、と笑いながら最後の一段を昇って、ヒル魔に近付いた。


「うぜぇ奴」


怪訝な顔してそう言ったけど、その言葉ほど嫌がってはないんだよね。

そんなんだから私は調子に乗っちゃって、今日もまたあなたの元にやって来てしまう。

ヒル魔が見てる脅迫手帳を横から覗き込もうとしたら、すぃ、と何気なく見えない方向に向けられた。


ちぇっ


そう心の中で舌打ちして、ヒル魔の隣に腰掛けた。

持っていた包みを持ち上げる


「じゃーん愛妻弁当〜」
「誰が愛妻だ誰が」
「…私?」
「フザケンナ死ね。」
「死なない!」
「…大体な、もう食ったぞ、昼」
「ぅぅうそ!!今日は私の特製弁当があるって言ったはず…!!!!」
「知らねぇ」
「言った!!!!!」
「知っててもいらねぇ」
「ヒドイ!!」


…ガーン


無駄な私の努力と犠牲になった睡眠時間…戻って来い。

初めてにしてはうまくいった、自信作だったのに


「じゃあコレどうしたらいいの…?」
「食えよ」


しょうがねぇな食ってやるよ

というセリフを期待してみたが無駄だった(わかってたけど!)


抱えたお弁当は、私だけで食べるにしてはあきらかに多すぎる(むしろ二人分にしても少し多い?)

私はしょんぼりしながらも、空腹には勝てなくてお弁当に手を付けた。





もぐもぐもぐ……


……あれ、卵焼きに味付け忘れた(…)




味のない卵焼きを飲み込んで、ちらり、ヒル魔を見た。



ヒル魔は涼しい顔でノートパソコンの相手をしている。




あー…かっこいい…なぁ

風に揺れる金色の髪の毛とか、少し目線を落とした吊り目とか、キーボードを触る長い指とか、エトセトラ

みんなは最低最悪の悪魔だって言うけれど、こんなにかっこいい悪魔だったら大歓迎。




もぐもぐもぐ



私、あのノートパソコンになりたい なんて

でもあの目に見つめられてあの指で触られたら、私だったら即効止まっちゃうね。

そしたら役に立たねぇパソコンだって捨てられそうだ。(人間でよかった)






「……視線が痛ぇ」
「どうぞお気にせず」
「集中できねぇんだよこの糞アマ」
「ヤダ!そんなに意識してくれてる!?」
「頼むから死ね」


ヒル魔は呆れたようにため息をついた。

怒ったりはしないんだよね。ちょっと嬉しい。

何度も何度も屋上に通って付き纏った、その成果かな?





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