夢のなかへ

□仰けば尊く
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いろんなことがあったな

外からの風を感じながら考えた



屋上へのドアの鍵を脅し取ったり

蛭魔に弱みを握られた人が私を人質にとったり

そんな奴を返り討ちにしてやったり



そんな中で蛭魔達はアメフトに打ち込んで

私はそんな皆を応援してた


つい最近までそんな日々を過ごしていたといいのに

何故だろう酷く懐かしい



「2番も歌っていい?」

「ご自由に」

「……」

「……」

「そういえば知らないかも」


「ばーか」



蛭魔はいつの間にかパソコンを閉じて私と同じ窓の外を見ていた



ここで涙ぐんでみたりはしないけど

もう来ない日々を懐かしく思った


写真なんて撮らないけれど

忘れないでおこうと思った




「蛭魔」


「あ?」

「高校でもアメフト、頑張ってね」

「たりめーだろ」

「きっとクリスマスボウルへ行ってね」

「きっとじゃねぇ。行くんだよ」

「…うん」


信じているよ。


離れても、ずっと





「あ、練習終わったっぽい」

皆がぞろぞろと体育館を出ていっている見て私は言った


「戻るか?」

「うん」


パソコンを持って蛭魔が立ち上がったので私も外から目を離す

ゆっくりとした歩みの蛭魔をおいこしてドアに手をかけた時

後ろから名前を呼ばれた


振り返れば真っ直ぐに蛭魔は私を見ていて

少し息を飲んだ




「応援に来いよ」


「………

……うん」





そうだよ、離れていたって変わらないものもある


ここは別れじゃない





明日は蛭魔にこう言おう



「またね」







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