GЯの歌の話
□某ギターキッズと某異端児の場合
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薄暗い部屋に、俺は裸で転がされていた。
寒い上に誰もいない。
俺の友達も、
家族も、
仲間も、
だいすきなあのひとも。
ただ目の前には無数の鳥籠と耳が痛くなるような沈黙があるだけ。そして俺もその中のひとつに入っていた。
助けを求めようと大声を出すがやはり誰もこない。
「…どうしよ…」
膝を抱えていると寂しくなってきた。
何日か経っても誰も来ない。
「飯塚さん…」
誰よりも大事な名前を呼んでも来るはずはない。そこでふと、頭の中で飯塚さんの曲が流れた。飯塚さんが作って、俺が言葉をつけたうた。それを歌えば寂しさは紛れるかな。
「…ーー」
しかし、声はでない。
「…なんで…」
独り言は言えるのに歌えない。
俺は、たったひとつの外界との繋がりさえも否定された。
「…い、ッづか、さぁん…」
俺、
歌えなくなりました。
歌えない俺は、
不要ですか?
歌えない俺は、
あんたの隣にいる価値はありませんか?
多分このままだと喋ることも出来なくなっちゃいます。
そしたら俺は、
本当に要らない人間になります。
だから、
「…れ、を…助、て…ぉ…」
ほら、声もカッスカスになった。
裸故の寒さでも、部屋の室温の低さでもない冷えが全身が支配した。
そして気づいたらーー…。
「…ぉ、言え…ら、ひ…」
頬を熱いものが伝い、視界が歪む。そして目の前が真っ暗になる。
ほらもう俺はダミ声のーー…。
「…章…紀章ッ!」
「……ぁ…?」
目を開けると飯塚さんがいた。
「大丈夫か?怖い夢でも見たのか?」
夢…。
じゃあ…。
俺が「あーあー」と声が出るのを確認するのを飯塚さんは「何してんだお前」と笑う。
「よ、よかった…声でる…。
というか、なんで飯塚さん俺を起こしたんです?」
飯塚さんが答えるより先に目から雫が。
「………ぇ…?」
「…紀章、なんか泣いてたから…。」
あ、さっきの夢か…。
「…飯塚さん、もし俺が歌えなくなったら…どうします?」
「え?」
「あ、さっき夢で…声が、出なくなったんです。初めは喋れたのに歌だけはダメで…段々声もカッスカスになってって…そしたら目の前が真っ暗になったんです」
一通り話すと飯塚さんは「そっか」と呟く。そして俺は、訊く。
「…歌えなくなった俺は、
飯塚さんにとって、
不要、ですか?」
そう言うと飯塚さんは俺の頬をむにっ!とつねる。
「い、いひゃいれす…」
「いつ俺がそんなこと言った?」
あ、あれ…飯塚さん…怒ってる…?
「俺は紀章が歌えようと歌えなかろうと関係ないっ!好きなら価値とかいらない!俺はどんな紀章でも好き…それだけだ!」
飯塚さん…。
「は、はずかふぃこと…なんれさらっと言えるんれすは…」
摘ままれたまま言うと飯塚さんは爆笑した。
「き、紀章…その顔で言うとか…可愛い…っ」
「い、飯塚さんがやったんじゃないですか!」
やっと頬を解放され、俺は喚く。
「にしても紀章そんなこと考えてたんだな…」
「俺だって不安になることはありますよ…」
「はいはい、わかったわかった」
立ち上がる飯塚さんの服を掴み、俺はこう言った。
「…飯塚さん…歌いましょう…」
「なんで?」
「そんな、気分なんです…」
それを聞いた飯塚さんはふわりと微笑み、キスをひとつ。そしてギターを構えて指を滑らせる。甘い音が鼓膜を叩き、心地が良い。
「…いいよ。何歌う?」
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紀章さんが放り込まれたのは「カナリヤ」の世界。pvかっこいいよね!ちょっとアンニュイな二人がかっこよくて大人なにおいするよね(ノ´∀`*)
紀章さんは歌えなくなったときの不安が常にあってどうしようってなってるイメージ