廻らないポラリス

□きらきらしたせかい
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星月学園のバレンタインは一大イベントだ。
生徒会が隠したチョコレートを見つければ、学園において相当な権力を持つ生徒会にもの申せるのだから。
今年は当たりチョコが2個あるらしく、より盛り上がりに拍車をかけていた。
そういうわけで、生徒会室にはいつものメンバーと、その当たりを見つけた2人。

「それで?願いごとは?」
「俺っ、夜久月子さんにビンタされたいです!!!」
「………えっ……」
「これはまた………」
「月子が嫌じゃなければやってやればいいんじゃないか…?」
「じゃ、じゃあ…失礼します!」

ばちーん!と、思ったよりも大きな音。
そうだ、月子は運動部だ…。
痛そうな頬を押さえて嬉しそうな彼を横目に、もう1人に話を移す。

「で、君は?」
「あの、俺は境井さんに占ってもらいたいです…」
「私か?いいけど……君はそもそも、よく来る奴…だろう?」
「覚えててくださったんですか!」
「まぁ、一応」
「あれはあれで好きなんですけど、顔が隠れてない状態でお願いしたくて!」
「……成る程?…とりあえず座りな」

彼なりの想いがあるのだろう、と思いつつ、いつものようにタロットを広げる。
…後ろから生徒会の視線を感じるのが妙に緊張する。

「………まぁ、こんなところか」
「ありがとうございました!!」

嬉しそうに帰っていく背中を見届け、皆で片付けに移る。
そんなに荷物やセッティングも無かったせいか、案外簡単に片付いた。
すべて終わったところで、別の緊張が顔を出す。
何を思ったか、用意してしまったからだ。
颯斗への、バレンタイン。
彼からの気持ちにはまだちゃんと向き合えていない。
だから、せめて。
そんな私さえ許してくれている颯斗に、少しでも何か応えたくて。

「……颯斗、この後、時間良いか」
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