廻らないポラリス

□けれど滲む世界
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次の日も、その次の日も彼女はいなかった。
それでも僕は行き続けた。


ある日、生徒会がかなり長引き、終わったときには真っ暗だった。
流石にいるはずがない。
わかってはいたが、足は空き教室に向かっていた。
そうして、呟くように彼女の愛称を口にする。

「…ペンギンさん…」
「あ、青空君!?」
「えっ、ペンギンさん!?」

暗闇から返事が返ってきた。
彼女がいる。
驚いたけれど、会えて安心した。


「どうしたんだい、こんな時間に」
「最近いらっしゃらなかったので…」
「心配してくれたのか…。ありがとう」
「いえ…」

小さな違和感を感じる。
何となく、元気がないような気がした。

「少し体調が悪くてね。今日は治ったから来たんだ」
「大丈夫なんですか?」
「ああ」
「どうしてまだここに、電気も付けずにいたんですか?」
「…星が、見たかったんだ」

ああ、そうか。
彼女の声が震えている。
見えなくてもわかった。
ペンギンさんは泣いているんだ。
でも、どうして?

「あの、」
「見て、青空君。今日は星が綺麗だ」
「…あ、はい…」

遮られてしまった。
明確な拒絶。
けれど僕はこんな時にも、呼ぶべき名前を知らない。
ペンギンさん。
その愛称は僕と彼女を隔てる壁でもあったんだ。
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