廻らないポラリス

□もがいては沈む先の光
2ページ/2ページ


「あの、白銀先輩?」
「番長は、"ペンギン"に会ったんでしょ?」
「え、はい」
「…どうして、あの子を知りたいと思ったの?」
白銀先輩の疑問は至極普通で。
僕はあの日のことを思い出した。
声が震えてるのはわかっても、声の掛け方がわからなかったあの日。
そうだ、あの時から僕は…

「泣いている彼女に、声を掛けられなかったからです」
「……そっか。覚悟は、あるね?」
「覚悟、ですか?」

覚悟。
それは誰かを知るには当然のこと。
でも酷く不似合いな言葉で。
覚悟がないわけじゃない。
けれど一瞬戸惑った。
彼女には、何かがあるのだ。
それはきっと辛いこと。
僕が知って、どうにか出来るかどうかもわからない。
寧ろ嫌な思いをさせるかもしれない。
それでも。

「あ、ります。あります!」

僕を見てくれて、安心出来る場所をくれた彼女の涙の理由が知りたい。
…境井先輩には、笑っていてほしい、なんて。


「うん、いい返事だ」
にこり。
白銀先輩はいつものように笑って、とある教室の前で立ち止まった。
それはいつもの空き教室で。

「ペンギンちゃーん!お客様だよー!」
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ