廻らないポラリス
□もがいては沈む先の光
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「あの、白銀先輩?」
「番長は、"ペンギン"に会ったんでしょ?」
「え、はい」
「…どうして、あの子を知りたいと思ったの?」
白銀先輩の疑問は至極普通で。
僕はあの日のことを思い出した。
声が震えてるのはわかっても、声の掛け方がわからなかったあの日。
そうだ、あの時から僕は…
「泣いている彼女に、声を掛けられなかったからです」
「……そっか。覚悟は、あるね?」
「覚悟、ですか?」
覚悟。
それは誰かを知るには当然のこと。
でも酷く不似合いな言葉で。
覚悟がないわけじゃない。
けれど一瞬戸惑った。
彼女には、何かがあるのだ。
それはきっと辛いこと。
僕が知って、どうにか出来るかどうかもわからない。
寧ろ嫌な思いをさせるかもしれない。
それでも。
「あ、ります。あります!」
僕を見てくれて、安心出来る場所をくれた彼女の涙の理由が知りたい。
…境井先輩には、笑っていてほしい、なんて。
「うん、いい返事だ」
にこり。
白銀先輩はいつものように笑って、とある教室の前で立ち止まった。
それはいつもの空き教室で。
「ペンギンちゃーん!お客様だよー!」