廻らないポラリス

□水しぶきで汚した身体
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翌日。
僕はまた、彼女のいる空き教室を訪れていた。

「懲りないね、君も」
「はい。こんにちは…、奏羽先輩」
「…ああ」

そっと、名前で呼んでみる。
何だかくすぐったい気持ちで心地よかった。
彼女は少し憂いのある笑みを浮かべたけれど。

まあ兎に角、昨日は名前だけでも教えてもらえた。
それは手放しで嬉しい。
けれどそれ以上、僕が何も知らないのも事実で。
こんなにガードが堅いと心配になる。
僕なんかが、彼女を知ろうとしていいんだろうか。
僕なんかが、彼女の笑顔を望んでいいんだろうか。
覚悟は、した筈なのに。
僕が弱いせいで、迷う。


「どうかしたかい?」
「いえ。あ、それで今日はもう一つ用事があるんです」

鞄を開け、目当てのものを取り出す。
僕のじゃない、薄いピンクの花柄のシャープペンシル。

「…これはまた可愛らしいシャーペンだな」
「はい。拾ったのですが、先輩か月子さんの物だろうと思いまして」
「んー、私のではないね」
「そうですか。なら月子さんに聞いてみます」

ごそごそ。
シャープペンシルをしまいかけて、止めた。

「青空君?」
「先輩も一緒に、月子さんにに聞きに行きませんか?」
「…何故」
「僕が貴女と一緒にいたいからですよ」
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