廻らないポラリス

□周りには君たちがいて
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月子さんがインターハイを終えた。
金久保先輩や犬飼君たちとの練習の成果を出し切れたようで、優勝できたそうだ。
そして星月学園は本格的に夏休みに入る。
部活のために寮に残る人は未だいるものの、だいぶ減ってきた。
件の月子さんたちも実家に顔を見せに帰るらしい。

長期休みに帰省しない僕は時々、人の少なくなった学園をぶらぶらと歩くことがある。
普段の熱量と、静けさの対比が好きだった。
今回に関しては、本当は、教室に忘れ物を取りに来たのだけど。
教室に置き忘れた辞書を片手に、あまり入らない校舎のほうへも歩き出して、ふと頭をよぎるものがあった。
…そういえば、"ペンギンさん"は、どうしているだろう。
もともと僕らはあの空き教室で出会って、今は生徒会室で顔を合わせている。
月子さんが生徒会の仕事に復帰した後にどうなるかはわからないけれど、きっと会長のことだからなんだかんだと奏羽先輩を巻き込むだろう。
それはそれとして。
僕はあの、はじまりの空き教室へと足を向けた。

「失礼します」
「…………えっ、颯斗?」
「……驚きました。まさかいらっしゃるとは」
「その言葉、そのまま返すよ。どうしたのこんな夏休み中に」
「…人のいない校舎を歩くの、好きなんです」
「なるほど。君らしい」
「奏羽先輩は?」
「…ここでは"ペンギン"だよ、"青空君"。まあ、単に気まぐれだよ。それに、非日常はこうやって君みたいなサプライズを運んでくれるからね」
「ふふ、そうですか」

なんだか、不思議な気分だ。
僕は楽しくなってしまって、それから夕方までなんてことない話をした。
…この時期に残っている事情は、お互いに深入りしなかった。
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