廻らないポラリス

□周りには君たちがいて
2ページ/2ページ


だから、私は馬鹿だというんだ。
颯斗の去った空き教室、夕暮れのなかで手を握りしめる。
颯斗と話すのは、楽しい。
彼は慣れると案外わかりやすくて、見ていて飽きない。
きっと自分では、うまく隠せてると思っているのだろうけど。
今日だって、こんな普通はみんな帰省している日に空き教室まで足を運ぶなんて、ちょっと事情がありますと言っているようなものなのに。
颯斗は優しくて、不器用で、怖がりで、それでも彼なりにもがいているのだろうと思う。
…ああ、桜士郎の策に嵌まっている。
元々そんなに親しい相手だって作る気は無かったのに、誉やクラスメイトだけじゃなく、生徒会だって大切になってしまっている。
とくに、颯斗は。

「ねぇ……君は、怒るかな」

小さな声で空に向かって語りかける。
答えなんか返ってこない。
そして私は、きっとアイツが怒らないことも知っている。
わかっている。
私は私が赦せないだけだ。
アイツが愛した私のままでいたい。
アイツを心の中心に置いていたい。
償いを、贖罪を、やめてしまえば、そうじゃなきゃ、私は……

「……ッ…」

身体が震える。
誤魔化すように、机の上に置いたペンケースを掴んで床に叩きつけた。
散らばるペンや定規がカランカランと無機質な音を立てて転がる。
ああ、私の頭の中みたいにぐちゃぐちゃだ。

だから私は気づかなかった。
教室の外に、まだ颯斗がいたことに。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ