廻らないポラリス

□試しに笑ってみようかなんて
2ページ/2ページ


「修・学・旅・行だー!!!!」
「桜士郎うるっさい」

修学旅行。
星月学園では毎年、3年の2学期の初めに行われる。
移動途中のバス、隣の席でげんなりとした顔を見せる幼馴染に無駄に絡んでみる。
こういうのがあまり好きじゃないのはわかってるけど、どうせなら一緒に楽しみたいからさ。

「そういえば自由行動の日はどうするの?」
「どうって…別に適当にするさ」
「ノープランってことね。…すっっごい綺麗なコスモス畑があるらしいんだけど、どうよ?俺もう超写真撮りたい!!」
「勝手に行けばいいだろう…」
「何の話だ?」

ひょい、と前の席から一樹が顔を出す。
移動の都合上、このバスには西洋占星術科しかいないはずなんだけど、そんなことは天下の生徒会長サマには関係ないらしい。

「だーかーらぁ、すっごい綺麗な?コスモス畑?があるって噂!」
「ほー、そりゃ良い。写真撮って生徒会の奴ら羨ましがらせてやろーぜ、奏羽!」
「……いつから私も行くと決まっているんだ…」

とは言ったものの。
噂と言うだけあって、全然見つからない。
自由行動時間も残り少なくなってきて、結局奏羽も一緒に探してくれて、やっと。

「わあ…」
「噂どーり。すごいじゃん」
「こりゃ綺麗だ」

なんとか見つけ出したそこは、息を呑むほど綺麗で。
思わず何枚も写真を撮る。
途中まで乗り気じゃなかった奏羽も言葉を失っていた。

「桜士郎、一樹」
「ん?」
「どうした」
「…思ったより、すごく綺麗だ。ありがとう、連れてきてくれて」

振り向きざまに優しく微笑んだ奏羽の笑顔に、俺は思わずシャッターを切った。
いつの間にか、またそうやって笑えるようになってたんだな。
ずっと余裕のない、どこか張りつめたような奏羽を見てきたから、なんだか嬉しくて、嬉しくて、俺も笑った。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ