廻らないポラリス

□ちょっとだけ背のびしてみたら
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こんなに緊張して生徒会室に入るのは不思議な気分だ。
颯斗へのお土産をポケットに忍ばせ、生徒会へのお土産を右手に、今日何度目かのため息を吐く。
中からはいつも通りの騒がしさが聞こえる。
これは桜士郎もいる感じだな?
タイミングが良いのか悪いのか、とにかく意を決して扉に手をかけた。

「…久しぶり」
「おー!奏羽だー!」
「あっ奏羽先輩!私がいない間生徒会手伝ってもらってたのお礼言いたかったんです!」
「少しお久しぶりですね、奏羽先輩」
「…来たか、奏羽」
「くひひ、待ってたよ〜〜」

皆が皆、私を迎え入れてくれる。
…ああ。
今の私をアイツが見たら、良かったじゃんと笑うのだろう。
ここにいる皆のような笑顔で。
自然と口元が緩んで、気が付いたら笑っていた。
聞いてくれ、旅行中は桜士郎が我儘で、一樹が横暴で、なんて言葉が口を突く。

ひとしきり騒いで、仕事を手伝って、いつの間にか私が正式な生徒会役員となっていたらしいことについて一樹に文句を言って。
一樹の指示で、颯斗と一緒に先生の所に書類を提出しに行くことになった、帰りの廊下。
これは桜士郎と一樹の計らいなんだろうということは、2人の顔を見なくともわかる。

「……颯、斗」
「はい?」
「その、なんだ。君にはいろいろと世話になっているし、……お土産」
「え、あ……、僕に、ですか?」
「…そう、だよ」
「ありがとう、ございます。…すみません、驚いてしまって」
「…いや」

目だけで颯斗の顔を見る。
戸惑いと、困惑と、それからわかりやすい嬉しさが目元と口元に表れている。
颯斗に喜んでもらえていることに私まで嬉しくなって、買ってよかったと素直に思った。
……ああ、胸が痛い。
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