廻らないポラリス

□周回軌道始まった僕ら
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僕はずっとクリスマスが嫌いだった。
でも、この学園に来てから…とくに今年は去年より、すこしだけこころが浮き立っている。
一樹会長のせいも多分にあるのだけど、星月学園のクリスマスパーティーは大規模で大変だ。
けれど今年は奏羽先輩も手伝ってくれるようだから、嬉しい。
マドンナと姫と一緒に準備できる、と他の生徒たちも盛り上がっているのは少しもやっとするけれど。

「おーい颯斗、こっちの壁の装飾をつけるの、手伝ってくれないか。私では身長が足りない」
「ええ、喜んで」
「おい奏羽、それはすぐ近くに立ってる俺への当てつけか?」
「当然だろう」
「ちくしょう!」

昨日も今日も準備を進め、クリスマスパーティーは目前。
あわただしくも楽しく終わるものだと思っていた、のに。

「月子!!」
「危ない!」

ふざけていた男子生徒がクリスマスツリーにぶつかり、月子さんの方へ倒れていく。
駆け出した一樹会長がぎりぎりで彼女を助け出し、まるでその代わりかのようにツリーが無残に崩れ落ちる。
僕だって、肝が冷えた。
月子さんに声をかけようと足を踏み出して、会長と目が合う。
会長は男子生徒たちを叱ろうとしている…けれど、その前に、僕に合図を送るように視線を流した。
僕のとなり、奏羽先輩に。
つられるように視線を向けて、先輩が震えていることに気づいた。

「奏羽先輩…?」
「…あ、…ぃや…」

…ああ、そうか。
奏羽先輩は大切な人がいなくなることを、非常に恐れている。
こんな状況、取り乱すには十分すぎるだろう。

「奏羽先輩、落ち着いて、大丈夫。見て、月子さんは無事です。会長が守ってくれた」
「………そ、うだ、な、そうだ、うん、それは、それなら、良かった…」
「はい。大丈夫です。だから、落ち着いて」
「……すまない…」

静かに下を向いた奏羽先輩の肩に手を添え、会場の端へ移動する。
さっき頼りにしてくれた僕の身長じゃ先輩の表情は見えなくて。
…やっぱり、クリスマスなんて。

けれど、一樹会長が、奮い立たせてくれた。
気丈にも笑顔で立ち上がった月子さんと、何かに耐えるようにしながらも輪に加わる奏羽先輩。
みんなでツリーを直して、明日を迎えるんだ。
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