廻らないポラリス

□周回軌道始まった僕ら
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結論を言うと、クリスマスパーティーは大成功だった。
準備では散々だったけれど、本番はみんな笑っていて、楽しくて。
僕もいつの間にか、つられて笑っていたようだった。
とりあえず、と簡単に片づけたパーティー会場、電気の落ちたツリーを僕は何とはなしに見つめていた。

「なにしてるんだ、颯斗?」
「…まだ残ってらっしゃったんですか、奏羽先輩」
「ちょっと昨日助けてくれた誰かさんにお礼を言えていなかったと思ってね」
「…そんな、何も」
「いや、ありがとう。颯斗の言葉が無かったら、あの後ああして立ち上がれなかったさ」

…お礼を言われるのは、苦手だ。
それにあれは一樹会長の促しがあったから気づけたのであって、僕は隣にいたのに何も気づけなかった。
返事を返す代わりに、口を突いたのはさっきまで考えていたことの残滓。

「…クリスマスは、ずっと嫌いでした。でもここはそう悪くなくて、だけど今年はいろいろなことがあって、気持ちがまとまらない。ただ…まだ心から好きにはなれそうにないんです」
「ふうん。いいんじゃないか、それで」
「え?」
「アイツがいなくなって、私はすべてのイベントを嫌った…いや、憎んだよ。昨日だってあんなことになるし、正直きつかった。…でも、さ」
「…でも?」
「だからってそれは、今日笑えない理由にはならない。少なくとも私は、君と笑った今年のクリスマスは嫌いじゃなかった…、いや、楽しかったと、言えるよ」
「…奏羽先輩…」
「そう思えるようになったのは君のおかげだっていうのに、そんな顔しないでくれ」
「……僕は今、どんな顔をしていますか?」
「そうだな…いつかの貼り付けた笑顔より、ずっと綺麗に泣いてるさ」
「ふ、なんですかそれ…」

涙は流していないはずなのに泣いているだなんて、先輩が変なことを言うから、僕は笑えてきて。
そうしたら、なんだかわからないけれど、胸のもやもやしたものも少しだけあたたかく感じた。
…クリスマスは、まだ好きじゃない。
でも、今日みんなと過ごして、奏羽先輩と話せて、これは僕にとってきっと大切なものになるんだと思う。
光の消えたツリーを優しい瞳で眺める奏羽先輩が、ひどく愛しく感じた。
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