廻らないポラリス

□巡る星々の行方
2ページ/2ページ


***

宿直の仕事も半分が終わった。
いつもは1人で過ごす長期休みを、こんなに騒がしく、楽しく過ごしたのは初めてだった。
少し足りないものがあったために発生した奏羽先輩との買い出し帰り、そんな気持ちをこっそり噛みしめる。
なんとなく、奏羽先輩といると、僕はいつも少し素直な気持ちになれる気がする。
と、ふわり、甘い香りに気づく。

「…何か食べてます?」
「ああ、飴。闇鍋のときの残りだよ」
「……通りで、ところどころ甘い食材があったんですね」
「好きなんだ、これ」
「飴がですか?神楽坂くんと気が合うかもしれないですね」
「神楽坂…ああ、星詠み科の特待生の。…じゃなくて、果物が好きなんだ」

ほらいちご味、と言って先輩が舌の上に乗せた飴を見せる。
奏羽先輩は大人びているくせにこうやって時々可愛らしいことをするから…なんだか、どきどきしてしまう。

「そういえば颯斗の好きなものは?紅茶はよく淹れてくれるけれど」
「ええ、紅茶は好きですよ。他にはそうですね…スープ系が好きです。ミネストローネとか」
「へえ。今の季節にいいな」
「ええ」

好きな食べ物なんて、とても今更な話。
そういう些細な話をあまりせずに、深い話ばかりをしてしまっている気がする。
それはそれで悪いことじゃないと思うけれど。
ただ。
僕らの関係はあたたかくて、不思議で、不器用だと思う。

そして僕は、それが好きだったから。
奏羽先輩とのほっとする時間も、生徒会のみんなとの優しい時間も、続いてほしかった。
――休みが明けたら、突然だった。
一樹会長が僕に次期生徒会長を期待して、僕がそれをはねのけたのは。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ