廻らないポラリス

□星座を指で紡いで
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颯斗が生徒会長にはなれないと言い放った日から、数日。
刻々と迫る期限のなか、ただ俺はあいつを信じて引き継ぎ作業に勤しんでいた。
そうすることしかできないし、そうするべきだと思っているからだ。

「一樹、また一人か。というかまた仕事しているのか」

突然遠慮なく扉が開いて、少し眉根を寄せた奏羽が立っていた。
ちゃんと休め、とため息とともに吐き出してカバンを置いた。
…現状特に仕事も無いくせにわざわざ来るのは、俺や颯斗を気にしてのことなのだろう。

「休んでるさ。仕事も引き継ぎ作業だけだ」
「……一樹はいつも大きな背中を私達に示してくれている。それに救われ、学び、着いて来た奴が大勢いる。けど、その責任や重圧がないわけじゃないだろう」
「…俺は、それでも大事なものを守り、導けるのなら」
「わかってるよ。それを否定したいわけじゃない。ただ、時々は息抜きしろって話」

ことり。
机の上には、桃色のフルーツのど飴。
奏羽を見遣ると、ひどく優しい顔をしていた。
…やめろよ、今は気を張っていたいんだ。

「私は一樹の食の好みはよく知らないし、これは私の好物だ。だから差し入れとも言えない、私からの押し付けだ」

いたずらっぽく笑って、奏羽は部屋を出ていく。
いつの間にやら、アイツもよく笑うようになった。
置き去りにされた飴玉の袋を破いて口に入れてみる。

「…甘っ」

呟いたら、笑みがこぼれた。
俺が自信満々に立っていられるのは、それを支えてくれる奴らがいるからだ。
それなら、俺が今やれることは。やるべきことは。
さあ、もう一仕事だ。
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