廻らないポラリス

□次の季節の星座はもうすぐそこ
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***

「"番長の呼び出し"って字面的に超怖くなーい?」
「はい?」
「…冗談だよ」

番長が生徒会長に当選し、演奏会への出場を決め、数日。
放課後はきっと忙しいからだろう、昼休みに音楽室へと呼び出された。
…まあ、予想はついている。
生徒会室じゃなくてわざわざ音楽室になんて。

「それで、奏羽のことでしょ?」
「はい。演奏会が終わったら、告白しようと思っています。白銀先輩にはお伝えしておこうと思いまして」
「やっぱりかぁ。…番長の気持ちを少し聞いてもいい?」
「…初めは、興味と感謝でした。彼女は僕を見てくれて、居場所とぬくもりをくれた」
「うん」
「それから、僕は先輩の話を聞いて、この人を笑顔にしたいと思った。けれど実際は助けられてばかりだった」

奏羽を語る番長の目はひどく優しい。
2人はきっとこれまで、俺の知らない間に大事な時間をたくさん過ごしてこれたからなんだろう。
奏羽の幼馴染として、番長の先輩として、…ただの白銀桜士郎として、嬉しく思う。

「いま僕は、大切な人を思い浮かべると、一番に奏羽先輩が浮かびます。笑顔にする、されるじゃなくて、一緒に笑っていたいと思います。…僕は、奏羽先輩が好きです」
「……泣くことだってきっとあるよ。生きてるんだから」

でも、きっとそれでいいと思う。
生きてるんだから。
ぶつかったり、泣いたり、そして笑ったり、そんな時間の積み重ねが幸せなんだと思う。
奏羽がそうやって幸せを積み重ねていってくれたら、俺はそれが幸せだ。
それはたぶん、アイツもそうだ。

「幼馴染とはいえその恋愛にまで口を出すつもりはないよ。ただ番長、ひとつだけ、約束して」
「…はい」
「これからもいろんなことが起こるだろうけど、突然奏羽を独りにすることだけはやめてね」

そういう苦しみはもう、味わわないでほしい。
…さあ奏羽、番長が好きだってさ。
俺は知ってるよ、2人で話してるときの、奏羽の表情の輝き。
だからきっともう、いいんだよ。
前に進んでいいんだよ。

「…頑張れ番長。アイツは手強いぞー」
「っはい…!」
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