廻らないポラリス

□星座盤から眺めるは
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颯斗の出演する演奏会が終わった――

そして、その直後から彼はひどく忙しくなり、なかなか生徒会にも来られないようだった。
地元紙なんかの取材がどんどん入ってくるらしい。
…だってあんなにも素晴らしい演奏だったから。
月子なんて泣いていたし。
音楽室で聴かせてもらった演奏よりも、一際輝きを増していた。

「…颯斗、忙しそうだな」

生徒会室、ぽつりとつぶやくと真っ先に月子が反応した。

「すごいですよね!颯斗君!」
「そう、だね」
「…月子、お前知らないのか」
「?」

桜士郎と一樹は少し苦々しい表情。
…まあ、私だって気づいていないわけじゃない。
ピアノで"青空"という姓、あまり音楽の世界に明るくない私でも思い当たる演奏家がいる。
だからきっとこれは、そういうことも入っているんだろう。
言いづらそうに月子に説明する一樹を横目に、なんとなく気になって、携帯を取り出す。
忙しそうだけど大丈夫かだなんて、様子見みたいな日和った文面を少し迷ってから送信する。
説明を聞いて尚、それでも颯斗君がすごかったからこそですよね!と重ねる月子の声が眩しく聞こえた。


そして、十数分して携帯の震え。
案外早い返信に驚きながら内容を確認する。
大丈夫、ありがとうございます、といつもの柔らかな笑顔を彷彿とさせるような答え。
それから、最後に一段落。

『今度、少しお時間いただけますか?大切なお話があるんです』

…少し、面食らった。
その一言に何も感じないほど、私は馬鹿じゃない。
きっと、これは。
ああどうしよう、どうしたらいいんだろう。
まだ、わからないんだ。
颯斗、君のことは大切だよ、だけど、私はまだ、
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