強く儚く在るために
□伍
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新選組の運命は、
この時から狂っていく──
とある日の夕方。
屯所の一室に幹部と千鶴、
華夜は集められていた。
どうも話を要約すると、わざと泳がせていた長州の間者と接触してしまい、捕まえてきたのだという。
それで山南は、少し怒り気味。
まぁ、その辺のことは聞いても分からないから軽く受け流す。
「土方さん、古高はなにか吐いたのか?」
原田が訊ねる。ということは、拷問かなんかしてたのだろう。
「風の強い日を選んで京の町に火を放ち、その機に乗じて天子様を長州へ連れ出す──。それが奴らの目的だ」
土方の言葉は淡々としていたが、中身は恐ろしいもので。
京に火を放たれたら、情報がますます入りにくくなる。
俺としても迷惑だ。
他の奴らも口々に長州を許せないと言っていた。
そういや、長州って彼奴がいるんじゃなかったか?
もしかしたら、そこから情報が手に入るかもしれない。
「長州が会合を持つ場所は?」
近藤が監察方に訊ねると、その一人である島田がすぐ応える。
「これまでの動きから見て、四国屋、あるいは池田屋のいずれかと思われます」
「よし。会津藩と所司代に報せを出せ。トシ、隊士たちを集めてくれ」
近藤の命令で、幹部たちはいっせいに動き出した。
「ん?んん?」
俺が呆然としていると、
「お前も行くんだよ」
と原田に腕を引かれた。
「あれ?もしかして、初仕事?」
「新選組は今、人手が足りないからな。こういうときのための呉羽だろ?」
「えぇ…」
当初の目的がそうだったのを思いだし、俺は重い腰を上げた。
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