強く儚く在るために

□壱
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しばらく歩いていると、再び羅刹に遭遇した。


「またかよ…」


今日は多い。


今までは一度も遭遇しなかったというのに、今日は一気に二回だ。


ま、何回遭ったところで何も変わらないが。


今度は自ら抜刀する。


「血を…く」


羅刹が何か言う前に俺は間合いを詰め、心臓を貫く。


刀を身体から抜くと羅刹が倒れた。


今回は断末魔をあげる暇も与えなかった。


「…くだらんな」


俺は再び刀を拭き鞘に納める。


すると、


「あ〜あ、やっちゃってますよ」


呑気な声が前方から聞こえる。


声の主の他に後二人いる。


彼らは全員、羅刹と同じだんだらを羽織っていた。


「お前、動くんじゃねーぞ」


その凄みのある声は普通だったら体を硬直させるだろう。


だが俺は違った。


「…何故だ?何故貴様にそんなこと、命じられねばならない」


睨みを利かせて言い返す俺。


だが、徐々に近づいてくる三人。


「お前は"これ"を見てしまった。よって、新選組に帰り処分を仰ぐ」


初めて口を開いた首に巻物をしている男。


「"これ"って…羅刹のことかな?」


俺が口角をあげてそういうと、途端に殺気を出す彼ら。


「お前…何故それを……!」


ギリッと歯軋りが聞こえる。


彼らは一気に刀に手をかける。


おっと、この様子だと重要機密だったかな。


「さぁね…どうしてだろう」


からかうように答えを焦らす俺。


焦っている人間ほど面白いものはない。


「…君、あんまり生意気言ってると……斬るよ?」


最初に呑気な声を出した彼は、もう殺気が滲んでいる声をだす。


「…簡潔にいうと。羅刹を作り出した奴と知り合いってとこかな?」


今、殺り合うのは得策ではないと思い正直に話す。


「…知り合い……だと?」


その言葉を聞いて、刀から手を離したが殺気はしまってはいない。


「そう。ま、彼奴(アイツ)が何しようとしてるかは知らないけどな」


フッと鼻で笑うと彼らから殺気は完全に消え、俺に話しかけてくる。


「本当に"羅刹を作り出した奴"を知っているのなら、お前が知ってることを全て話せ」


…なんか、その命令口調立腹するんだが。


と思いながら、仕方なく口を開く。


「雪村綱道。幕府に仕えている医者。確か…江戸にいたんだっけか」


いまいち分からんがそういう感じだ、きっと。


綱道に興味ないからあんまり詳しくは知らんが、羅刹を綱道が作ったってことを知ってれば文句ないだろう。


「…いいだろう」


凄みのある彼が俺と綱道が知り合いってこと認めたのだろう。


「だがな…それをお前が周囲に洩らさないとは限らない。よって今日から、お前の身柄は新選組で預かる」


「おお、そうかそうか。それは良かった…ってはぁぁ!?」


てっきりもう見逃してくれると思ったが、そう甘くはなかった。


「意味が分からん。頭おかしい」


俺が抗議すると、


「…じゃ、今から死んでもいいけど」


「えぇぇ……」


いや、死なないけど。


お前ごときが俺を殺せるわけないけれども。


面倒なので、


「分かった」


俺は新選組に行くことになった。













―――これが




―――俺と彼らとの







―――出逢いだった。



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