short//鋼

□誰かのために
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"お願いだから、無茶しないで"


ふと脳裏をよぎったその言葉に、彼は我に返った。

彼は今、アルフォンスと二手に分かれスカーから逃げていた。

右手のオートメイルには、少しだけヒビが入っている。


「くそっ…取り敢えずアルと落ち合って、今は逃げないと…」

次第に激しくなる雨の中、意識を集中させてスカーの攻撃に備える。

「(取り敢えず…大通りに出てみるか。)」

エドワードは辺りを見回しながら、大通りへと向かった。
そして路地を抜けた向こうに、見慣れた少女が立っていた。

『エドっ』「リーシャ!?」

ほぼ同時にお互いの名前を呼ぶ二人。


「何してんだ!
来るなって言っただろ!」

『だって心配だったから…』

急に怒鳴るエドワードに、リーシャは肩を竦めた。
そんな彼女の反応にハッとしたエドワードは、リーシャに駆け寄った。

「戻れ、リーシャ。」

『……オートメイルが…
また無茶してるでしょ?』

ヒビが入ったオートメイルを見て、リーシャは心配そうな表情を浮かべた。

「お前には…関係ない。」

『そんなこと言わないでよっ!』


いつスカーが来るか分からない状況。

エドワードは焦っていた。
一刻も早く、彼女をこの場から離さなければ…と。

「リーシャ、よく聞け。
今この辺にはスカーが居る。
奴は俺を狙ってる。
だから、お前は早く此処から逃げろ。」

『危ないなら、一緒に逃げようよ!
アルも一緒に…』

そう言ってリーシャはエドワードの服を掴む。

「駄目なんだ!
今此処で奴を止めておかないと…」

『でも…「約束する。」

リーシャの言葉を遮ると、エドワードは彼女を抱き締めた。

「俺とアルは、必ず戻るから…
だから待っていてくれ。」

『エド……』

「大丈夫だから。」

『………………わかった。』

小さく呟くとリーシャはエドワードから離れた。

『約束だよ。。』

目に沢山の涙を浮かべながらそう言うと、彼の頬にキスを落とした。
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