キオク

□記憶の奥底
1ページ/4ページ






いつもの世界。


真っ白で、なにも見えなくて。


唯一見えるのは、自分の姿くらい。


そこで、いつも聞こえるの。




「なまえ・・・なまえ。」




いつも、私を呼ぶ声が。


今、私は声が出せない。


だから、聞き返すこともできなくて。




「なまえ・・・なまえ。」




返事ができない。


いつも、この人は悲しそうなの。


応えたい・・・。


彼の声に応えたいよ・・・。


こっちも・・・辛くなっちゃう。


懐かしい声なのに。


落ち着く声なのに。


安心する声なのに。


・・・愛しい声なのに。




ねぇ、あなたは誰なの?


私の記憶のどこかにいるあなたは。


なんで、思い出せないの?


声を聞くだけで、愛しくて愛しくて仕方ないのに。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ