キオク
□記憶の奥底
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いつもの世界。
真っ白で、なにも見えなくて。
唯一見えるのは、自分の姿くらい。
そこで、いつも聞こえるの。
「なまえ・・・なまえ。」
いつも、私を呼ぶ声が。
今、私は声が出せない。
だから、聞き返すこともできなくて。
「なまえ・・・なまえ。」
返事ができない。
いつも、この人は悲しそうなの。
応えたい・・・。
彼の声に応えたいよ・・・。
こっちも・・・辛くなっちゃう。
懐かしい声なのに。
落ち着く声なのに。
安心する声なのに。
・・・愛しい声なのに。
ねぇ、あなたは誰なの?
私の記憶のどこかにいるあなたは。
なんで、思い出せないの?
声を聞くだけで、愛しくて愛しくて仕方ないのに。