小説

□第一話「運命なんて信じて無かったけど」
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ボクはしてはいけない恋をしてしまったんだ




分かっていたのに、どうしても、どうしても忘れられなかったんだ




どうして、ボクは君の横に立てないのだろう




ボクはどうして











君と"同じ"で産まれなかったんだろう















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ああ、やってしまった。
とうとう"かかって"しまったんだ。





絶望的な状況にリアンは深く深く溜め息をついた。

リアンは獣人族である。
人の言葉を介し、二足歩行が可能な獣の姿をした人、それが獣人族。
その中でも彼は力差が下の兎の姿であった。
今彼がひっかかってしまった罠は、この世界に獣人族とは別の種族、人間が仕掛けたものである。
彼が絶望しているのはそれが動物相手だけではなく対獣人用でもあるからだ。
朝日が差し込む森の中を見回すが周りには誰も居なく、獣人族の仲間の姿すらない。
一人でなんとかしなければ・・・そう思ったリアンはお気に入りのバッグから小さな鋏を取り出し、罠の鎖に引っ掛けて左右に引っ張ってみることにした。
分かっていたものの、こうもびくともしないのは流石に落胆してしまうものである。
右足を拘束する鎖は何をしても取れなかった。
そのとき


「ねぇ、・・・大丈夫?」


上から突然降ってきた声にハッとしてリアンは顔をあげた。
上を見上げると後ろからこちらを覗き込む女の子・・・人間の女の子が立っていた。
リアンは硬直し、ただただ女の子の顔を見つめる。

「・・・ねぇ、どうしたの・・・?」


女の子はリアンを心底心配してくれているのか、様子を窺うように前屈みになった。

が、獣人族のリアンにとっては何もかもの行動が恐怖の対象だった。



「うわぁぁぁぁぁぁぁあやめてぇぇぇぇえ!!」


恐怖に支配され叫んだリアンは飛び上がって人間から離れた。
勿論鎖が付いていたので1メートルほどしか離れられなかったが。
そんなしっかり怯えた様子のリアンに、尚も女の子は優しく話しかけた。

「大丈夫、私は何もしないわ。外してあげるから、おいで?」

そう言って女の子は近寄るわけでもなくただそこに座ってじっと待っていた。
リアンは怯えつつも少女の様子におずおずと右足を差し出す。
鋏は右手に持ったままではあったが。

ガチャン

さっきまで外すのに苦戦していたのとは対象にあっさりと鎖が外れ落ちた。
あまりの手際のよさにそっと彼女の手の中を覗き込む。
すると、彼女の手には少し錆びた銀色の鍵が納まっていた。

「き、君は、一体何者なの?」

おずおずと気になったことを尋ねてみる。
この世界は殆どが獣人と人間の数で出来ている。
リアンが知る中では、人間は獣人達を狩るのだ。
用途は様々だが、主には観賞用、奴隷、そして食用である。
実験などに使われているなんて話すら出てきている。
だからこそ、リアンには彼女が自分を助ける事に酷く驚いているのだ。
それでも彼は彼女から一定の距離を保っていた。
それを気にする風でもなく、彼女は答える。

「この鍵は、狩人さんの家からちょっと借りてきたものなの。」

私ね、獣人族のこと嫌いじゃないし、むしろ交流したいと思ってるわ。
だからこういう罠とか、反対してるの、・・・・大きくは言えないんだけどね。

彼女はくすりと笑って立ち上がった。
リアンはその行動にすら身体を震わせる。

「この鍵、黙って借りちゃったの。すぐに戻らないと・・・」

罠に気をつけてね、そういって彼女は元来た道であろう場所に足を向けた。

このままでは彼女が帰ってしまう。

リアンは先程まで彼女が怖くて仕方なかったのに、先程の言葉で別の感情を抱いていた。
引き止めたい、でも言葉がでない。

行ってしまう・・・!!

リアンはバッグよりもお気に入りのハット帽の前を両手でぐっと下に引っ張った。


「待って!!!!」


今まで何回かしかしたことのない大声に自分で驚きつつも、振り返ってくれた彼女に言葉を続ける。

「あ、ありがとう・・・あの・・・外してくれて・・・」

それで・・・それで・・・・
どうしたらまた・・・彼女に会えるんだろう・・・・
なんで、会いたいんだろう・・・?

葛藤が、彼の言葉を濁らせていく。


「お、お礼・・・お礼したいから!・・また・・その・・」


帽子を下げても、彼の真っ赤な頬までは隠せなかったようだ。
彼女が笑う。

「また・・・会えるよ」


いつでもね、そう続けた彼女は今度こそ森の奥へ走っていってしまった。

その背中を見つめ、彼、リオンは彼女に対しての自分の気持ちが、恐怖から違うものへと変わっていっていることに気付き始めていた。

























あとがき

絵本感覚のつもりなので文章をなるべく短くしています。
なんか書いててこっぱずかしいなぁ;

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