うたたね
□エピローグ
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エピローグ
火事は思ってたより
赤くなかった
ただ淡々と灰黒い煙が
どこまでも
深海のような青い空を
染めていき
ぴーぴーと鳥の鳴く音と
消防隊の叫び声
シートを被せられ運ばれる
おばあさんを見に来た人々
口々にお気の毒、心配
心に無いことを笑いながら
平気で話す
僕はそんな様子が
悲しくて恥ずかしくて
何もできなくて
ただ立ち尽くすだけ
新聞に書いてあった
「火事により亡くなった」
これを読んでみんなは
どう思っただろうか
十人読んで十人とも
悲しい気持ちになることは
きっとない
三日も経てば忘れる
どうしようもない虚しさと
灰をだけを残して。