Souji

□ストレリチア
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「沖田さん」

か細い、繊細な声が
僕の耳を通り抜ける。

僕は、気付かない振りをするのだ。
僕も案外子供なんだと
今になってつくづく思う。

「沖田さん?」

怪訝そうに、舞千代ちゃんは僕の名前を再び呟いた。

こうやって、
何度も名前を呼ばせて
勿体振るなんて、

そうやって、本当は
彼女の声が聴きたいだけだなんて、

相当、重症だ。

まさしく僕は恋に溺れた男だと思う。


「…沖田さんなんか、嫌いです」

舞千代ちゃんは
少し不機嫌そうに呟いた。

僕はそして、
悪戯を思い付いた時の少年の様に、少し口角を上げた。


「…ふぅん?言うね」

「な、何ですか」

困ってる困ってる。

「本当に?本当に嫌いなら、君から口付けしてみてよ。嫌いなら、できないでしょ?」

こんなときの僕は
酷くみっともない男だと思う。

舞千代ちゃんは思った通り、赤い顔で俯いた。

「ほら、ここだよ、ここ」
僕は自分の唇を指差した。

「…沖田さんの、意地悪」
舞千代ちゃんはそういって、


僕の唇目掛けて、
潤んだ瞳と、紅潮した頬で一歩踏み出した。



fin.
→解説

ストレリチアの花言葉は
「気取った恋」
でした!

なんか沖田さんらしいと思い、書きました。

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