Sanosuke

□明日
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「おー、嬢ちゃん」

先を行こうとした私の行く手を阻まれる。

「…え」

振り向くといかにも柄の悪そうな男達。

「嬢ちゃんかわいいなぁ。俺たちとちょっと遊んでこうぜぇ」

やだ、怖いな…

「…あの、私、用があるので…」

こういうのは断った方が身のためであろう。

「つれねぇなぁ〜。いいじゃんかちょっとぐれー」

「そうだ、俺らについてこいよぉ」

掴まれた手首を振り払おうとするが、力が強すぎる。

「あ、あの、離してください」

元から他人と会話をするのは得意じゃない上に
こんな状況って。

「離してください、だってぇ〜かーわい〜」

どうしよ、これは
本当にまずい。

誰か…

その時、男達の背後に
人影が。




「おい、男が寄ってたかって女相手に何やってんだよ」


だ、誰?
でもあの羽織は…
もしかして。

「ああ?なんだおま…ってやべっ!新選組だ!」
やっぱり、そうか。
新選組…
人斬り集団で有名の。
さっきといい、今といい、なんとついていないことか。
さっきの男の人達も
怖じ気づいていなくなったし…



「…嬢ちゃん、大丈夫か?何かされてねぇか?」
上から声が降ってくる。

「あ、えと、」

こんなときも私は
何を言っていいか分からない。
どうも緊張してしまって。

「?ほんとに何もされてねぇんだな?」

どうしよう…
でも結果論だけど、
私はこの人に助けてもらったわけだし、
お礼くらいしないといけないんだけど…

「〜〜っ」

私は何故か逃げ出してしまった。
ばかだな、私。

助けてもらっておいて
お礼の一つも言えないなんて。
こんな自分が正直
嫌だった。

人見知りで口下手で、
声が小さくて。

…あの人、気分悪かったよね。

だからといって自分は
自ら新選組に乗り込んで お礼を言えるくらいの
自信もない。

私はただ、そんなことを思いながら、家路に着くのだった。
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