人生ゲーム
□第二章
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走り去っていく皆の後ろ姿を、
じっと見ている、少女。
その瞳には、
なにが映ったのか……。
少し俯いた。
まるで目の前の光景が眩しい光りを見ているかのように、目を細ませ。
そして、
楽しそうに、あるいは
苦しそうに、
……誰にも分からないが、彼女は笑った。
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「霧鳩さ〜ん!!」
「!!」
自分の名前を呼ばれ、驚いて顔を上げる。
「早く行きましょう!」
遠くから手招きをする春奈を、ただ不思議そうに見つめる。
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すると誰かが彼女の手を引っ張った。
「えっ?」
「ほら、行こうぜ!!」
いつの間に戻ってきたのか、円堂がいた。
そしてにかっ、と笑う。
「……?」
「よし、行くぞぉ!!」
そのまま走りだす。
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走りながら、
鈴はずっと不思議そうに…
円堂の顔と、
自分の手──円堂が握っている自分の左手を見比べていた。
そして、
「……」
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確かに彼女は、
笑った。
綺麗でカラフルな遊具が並んでいる。
その中で、鈴はメリーゴーランドの馬に乗って回っていた。
彼女のお気に入りは、
たてがみが青く、目が綺麗な茶色の馬だった。
「可愛い馬ですよね!」
「えっ?」
鈴の後ろから春奈が声をかけた。
「あ、すみません。なんか、すごく嬉しそうに馬を見ていたから……」
「あっうん。この馬、お気に入りなの」
嬉しそうに微笑む。
それを見て、春奈も微笑んだ。
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鈴達は一番最初に、メリーゴーランドに乗ることにした。
これは春奈の意見だ。
遊園地に来たら、真っ先に乗ろうと考えていたらしい。
メリーゴーランドは5分くらい回っていただろうか。馬達は、やがて静かに止まった。
「久しぶりに乗ったら、やっぱり楽しいわね!ね、冬花さん」
「木野さんもですか?」
満足そうに2人が馬から降りる。
そのあと、
夏未がかぼちゃの形をした馬車から顔を出した。
「夏未さんも馬に乗れば良かったのに…」
残念そうに春奈が言った。
「私は良いのよ」
「えぇ〜…」
メリーゴーランドから下りてくる少女達。
その少し後ろで、ゆっくり馬から降り…
「またね」
そう呟き、
少女達のあとを追いかけて行った。
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「つまんない」
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「結構たくさん乗りましたねー!」
春奈が言ったのを聞いて、秋は頷き微笑んだ。
少女達の少し向こうには円堂達がいた。
円堂は源田やアフロディ達と楽しそうに話していて、その隣で一之瀬がリカに苦戦していた。
「リカさん!それに塔子さんも!!どうして」
「皆、久しぶりだね!実はあたしもさ、招待されてたんだ。だからリカを誘って来たってわけ」
「そっか!久しぶりだね」
その様子を見ながら夏未は時計を見た。
「……楽しそうなところ悪いけど、もうすぐ3時になるわ」
「えっ、もう…?」
夏未が鈴に自身の腕時計を見せた。確かにそこには3時前を示していた。
「でも、あと12、3分…くらいあるかな」
がっかりしている春奈を見て、鈴が言った。
それを聞いて春奈はパッと顔を上げた。
「あ、じゃあ最後にあれに乗りましょう!」
春奈が指したのは……──観覧車─…
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でも、
「あれは、一周10分はかかるよ」
「えぇ〜…」
鈴の言葉に再びがっかりする春奈。
それを見て鈴は少し考え込む。
………。
「じゃあ、もう少し時間が短い観覧車にしない?」
ピクッと春奈が反応した。
「そんなのがあるんですか!?」
「うん!団体用だけど……、一周は5、6分くらいだよ」
「本当ですか?じゃあ早く行きましょう!!」
テンションが上がっている春奈を苦笑いしながら見つめる夏未。
それを見て鈴は自然に笑ってしまった。
少し歩いた先に、先程よりも大きいゴンドラで輪が小さめの観覧車が見えた。
皆その観覧車へと走る。
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「え、鈴さんは乗らないんですか?」
「風丸達もいいのか?」
「私は何回か試し乗りしたから……」
「俺も、今はいいや」
「あぁ、俺も少し休むことにする。円堂達だけで行ってきてくれ」
円堂は鬼道と風丸を見て頷いた。
「そっか、豪炎寺は?」
「俺は少しショップを見てくる」
「おう、分かった!」
その声に春奈は待ちきれず、ゴンドラに飛び乗った。
「じゃあ、行ってきまぁす!」
春奈が手を振った。
鈴がそれに返すようにして手を振る。
「行ってらっしゃい!!」
観覧車の扉が閉まり、ガチャッとロックがかかる音がした。
大きいゴンドラは、
ゆっくりと上昇していった。