只今傍観ちゅう
□それは始まり?
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「はぁはぁ…」
私は呼吸を整えながら通りすがりにあった公園のベンチに座った。
いやいや、ここはどこだ?私は家に帰るところだったはず。普通に歩いて帰っていたよね?変わったところは何も無かったよね?
それよりも、
「さっきのって……」
見覚えがある。
それもそのはず、彼は私が毎週見ている大好きなアニメのキャラクターなのだから。今は第2期で主人公変わってしまったけれど今のは今ので楽しいからいい。
……あれ、何を考えていたんだっけ?
あ、あぁそうだ。なんかアニメのキャラに会って……?
ということは、これは俗に言うトリップという奴なのか?いやいや、そんなことがあるはずが無いではないか。
うん、ある訳ない!
あはははは、あははは………
ふと、私は足元に光を感じ下を見た。そこにはきらりと小さく光るものがあった。
「あれ?」
そういえば、ボールぶつかってくる前に見た気がする。
私は光るものを拾った。
「っ!?」
その瞬間光りは強くなり……
………私はあっという間な包まれた。
「うぇぇ!?」
気持ち悪い声をあげながら私は目を閉じた。
…ちょっ、誰か助けてー!!
暫くして、私は目を開けた。
「え……」
なんだかさっきからまともな言葉を発してない気がするけどまぁいいや。
周りを見渡すと真っ白な空間。
これはもしかしなくても夢小説とかでよくあるトリップした人に説明するため神(まさか彼が来るのか?)が用意した……!?
……。
「どーもでーす」
「アフロディじゃないのかちくしょう!」
「え、ひどくない?」
そんな冗談は置いといて。
現れたのは一人の少年だった。
6〜8才くらいの容姿で何故か背中からは小さな羽が…。え、可愛い。
「僕の名前はねー、……」
「な、名前は……」
「ないよー」
……?
「はい?」
何この子、意味わかんない。でも可愛いよ!
「ナニ?名前はないよ。だって僕はただのプログラムだもん」
「プログラム……?」
自分から名前はって言い出した癖に何なんだ。しかもプログラムって……?
「うん」
少年はふわりと私の目の前に飛んできた。
「君はここがどこか分かってるよね?」
「え……イナイレの…?」
少年はこくんと頷いた。
まって、展開が速すぎてついていけない。
「君は僕を作った人から選ばれたんだー。最近は凄いよね。なんか時空の歪みとかなんとかで“アニメの世界”と君達が普段いる“リアル世界”が繋がっちゃったんだって」
「すみません、規模がデカすぎてついていけません」
「勿論それはここだけじゃない」
「へっ?」
少年が無表情で言うには他の“アニメの世界”も繋がっちゃっているとか。
でもさ……
「アニメって作られたお話でしょ?どうして私達の世界と繋がったりするのさ」
「意志の強さ?」
「………うん?」
「人気があるアニメは誰もがあこがれるよねー?行きたい!って願う子だって少なくない。現に君はその一人だ」
「まぁ…」
「ね?」と少年は首を傾け、ふわりとまた飛んだ。
ふわふわと飛びながら、
「その思いが強くて、人間の中にある何かの力が働いたの」
「えっ怖っ!!」
人間怖い!恐るべしっ
……て、
「そんな話、私が信じるとでも?」
「じゃあこの状況はどう説明するの?」
「うっ……」
私が口ごもると少年は首を傾げ「これは夢じゃないからね」とい言った。
それを見て私は溜め息をついた。
どのみち、今は何も分かっていないんだからこのままこの子を信じておこう。別に嘘だったからってどうにかなる訳じゃないんだから。
「でもねー、それはあまり良いことじゃない。だってそうでしょ?」
「どうして?」
「例えばアニメの世界にとっては普通のことが君達の世界では普通じゃないかもしれない」
「うーん…」
「分かりやすく言えば、君達の世界でやるサッカーとこちらの世界でやるサッカーとで試合をすると?」
「死人でるよね、それ!?」
少年は頷いた。
「良いことじゃないでしょ?」
いや、まぁ怖いですね!
「それで君には世界の代表の一人として、イナズマイレブンの世界に行き君達との世界と切り離してほしいのー」
「切り離すって……、どうやれば…」
「物語を正しく動かせばいい」
正しく?それってどういう意味なんだ?
「時空の歪みが原因で物語はあるべき方向へ進まなくなってきている。君はそれを直してほしいのー」
直す?どういうことかやっぱり分からない。話も速すぎて上手くついていけないし……。
「君はもう物語の結末は知っているよね?だから正しい方向だって知ってる。君の力で“彼等”を助けてあげてー」
「え、あの……ちょっ」
光りがだんだん薄くなってきた。白い世界はやがて灰色へと変わっていく。
「大丈夫。この世界では生活出来るようにしてあるし、君のリアル世界のほうも心配いらないよ。君はリアル世界だと高校生だけどこっちに合わせてあるからー、あっ時期は春過ぎてるかなー。また会えるから、またね」
「はい?えっま───」
プツンという音が耳元で聞こえた。それと同時に私の視界は真っ暗になる。
「あぁ、聞こえてないと思うけど……。“君なら大丈夫だって言ってたよ。”だから」
「な……に……」
よく聞こえない。
少年が微かに笑った気がした。
「───頑張って」
私の意識は完全に途切れた。