─ヒーローごっこ─

□悪魔退治…09
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何で私は毎回……!!


「んぅー!!」

「静かにするんだったら離してやるよ」

「ん!ん!」


私は必死に頷いた。
本当、私戦闘に全然向いてないんだろうか。背後の気配に気がつかなかったなんて……。


「……分かった」


手が離れる。
私は恐る恐る後ろを振り返った。


「……」


綺麗な金髪に一部、白い髪が混ざっている……ポニーテールの…女の子…?
その子はとても綺麗だった。


「……どうした?」

「っ!あ、いや……。誰?」

「俺は木屋功治だよ」


俺ってことは男の子だったのか。
彼は私を見つめ微かに首を傾げた。


「お前……、もしかしなくても水使い?」

「え、何で知って…」

「だって、俺達の所に居るのって水使いだし」


俺達の所に居る…?
じゃあ他の所にさくらが……!?

私は思考を巡らせる。
頭の隅で何かが引っかかる。
あの時見た、白い影……。
あっ……


「白竜…?」

「!」


そうだ。もしかしたらそいつと一緒に居るかもしれない!


「……ねぇ、」

「え?」

「お前って人間でしょ?」

「……」


瞬間、私は目を細めた。


「…喰っていいよね?」

「……」


私が小さく息を止めるのと同時に彼は優しく私を抱き寄せた。


「少しならいいでしょ?肉は喰わないようにするからさぁ……」


「せめて血だけでも」と微笑んだ。


「……」


私は止めた息を吐き出し、思いっきり吸い込んだ。


「よくないわボケエエエェェェッ!!!!!」←

「ごふっ!!?」←


腹を蹴飛ばし、私は逃走を開始した。


「なっ…!?」

「またねー!!」


出来れば会いたくないけれど←
こんな所で捕まっているわけにはいかない。石退シュウにバレたら終わりだ。
とにかくさくらを探さないとっ!

私は走り出す。
窓ならよく見かける。

でも出口とか、さくらとか、全然見つからない。
窓の外を見かける度に覗いては見たが、とても下りれそうにない。

部屋の扉でさえなかなか見つからない。


「…っち」


刹那。


「─────っ!!!」

「!?」


何っ!?これって、叫び声…!?
聞こえてきたのは悲鳴に近い高い声。
しかも……


「さくらっ!!??」


私は慌てて走った。
一つ曲がり角を曲がった先に大きな窓があった。
行き止まり……?
しかし隣の壁に古そうな扉を見つけた。

もしかしてこの部屋……?

私はドアノブに手をかけ、思いっきり開けた。

「さくら!?」


中から光が漏れた。
それに一瞬目を細め、私はゆっくり顔を上げた。


「…え……?」


そこには、潤んでいる目を薄く開け、ベッドに倒れている……さくらと……

口の端から“赤色の液体”を垂らしている……白い少年…白い髪の……


「……鈴…?」

「…水使いか……」

「っ!?」


さくらと白い少年の言葉が重なった。
こいつ、まさか白竜……?

まさか…さくらの……

さくらを見る。
彼女は私を見ると小さく口を動かした。
上手く聞き取れなかったが、なんとなく言ってる意味が分かった。

私は目を見開く。


「に……げて…鈴……!」


(新たな旋律を奏でた)

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