図書室その2
□DeLEate
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宗教対立、宗教戦争、・・・そんな物は物語の中だけの絵空事。
争いあうことは絶対悪とされ、破った者はいかなる理由があろうと、尽く地獄に落ちる。
戦争は、この宗教が広まった約七世紀前から起きていない。
恒久平和などという陳腐な表現は、当の昔に達成された。
人々は慈愛と庇護の精神を赤ん坊のころから学び、それに従事する。
犯罪も年に四、五回起きるかどうか。
平和な世界はそのまま俺にとって、退屈な世界になった。
退屈を退屈と感じない人々、その中でまんじりともしない生活をマンネリ化した行動で過ごす。
大人はもとより、何も分からないような子供さえこの神にひれ伏す。
赤ん坊が最初に発する言葉が“パパ”や“ママ”ではなく、絶対神“ノイターク”の名。
両親はその言葉を聴いて悲しむどころか喜ぶ始末。
笑い話を通り越して、薄ら寒ささえ感じる。
俺は、こんな宗教団体の中で、唯一、神の存在を信じていない存在だった。